肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

化粧品の本当の原価率と調剤化粧品の原価率

time 2016/08/16

化粧品ジプシーの患者さん

「ジプシー」は遊牧民族のことです。「化粧品ジプシー」「コスメジプシー」とは、1つの化粧品を使い続けることができずに、お気に入りの化粧品を見つけるまで様々なメーカーや種類の化粧品を試し、探し続けている人のことを指します。化粧品ジプシーになる原因は、新しい美容成分を使った化粧品に目移りしてしまい「もっと肌を良くしたい!」という美への飽くなき探求心であったり、WEB情報やメーカーの広告に踊らされて「こっちの方が良さそう!」と目移りしてしまったり、アトピーやニキビで敏感肌のため、なかなか肌に合う化粧品が見つけられなかったりと、理由は様々です。

当院はニキビの専門治療を行っていることもあり、「市販品で肌に合う化粧品がなくて困っている。」という患者さんに調剤化粧品を処方してきました。できるだけ肌の負担を取り除くために、防腐剤フリーや、微量の化粧品を調剤しています(その代り、冷蔵保存で使用期限を定めています)。ニキビ跡が綺麗になるように「美白」や「肌再生」に特化した化粧品を調剤しているため、ニキビ患者さんだけでなく、美白やアンチエイジングの日常ケアとして調剤化粧品を使いたいという方も増えてきました。最近では、男性の方も増えてきています。

化粧品ジプシーの患者さんは、今まで様々な種類の化粧品を試してきているだけあって、化粧品にとても詳しく、診察の際にマニアックな質問をしてくる方もいらっしゃいます。このブログでかなりマニアックな内容を書いても、内容をしっかりと理解されている方がいて驚かされます。そのような方は、化粧品の価格にも熟知しており、「どうして調剤化粧品はこんなに安いのですか?」と質問をしてくることがあります。今回はその答えとして、調剤化粧品と市販品の原料代や原価率を比較して、述べていきたいと思います。

調剤化粧品は市販の化粧品の価格の1/5以下?

当院では「ビタミンCエチル」を5%配合した化粧水や、「3-0-グリセリルアスコルビン酸」を8%配合した化粧水を院内で調剤しています。価格は55mlで1,980円です。一方、市販の化粧水に配合されているVC誘導体の濃度は、開示していないメーカーが多いものの、実情は、1%以下がほとんどです(医薬部外品認定されている場合は、配合濃度が定められていますので、例えば、ビタミンCエチルであれば1%濃度で配合されています)。市販品の有効成分の濃度は、調剤化粧品の5分の1から8分の1にもかかわらず、価格は倍以上するものも珍しくありません。

資生堂の「HAKUメラノフォーカス3D」は、実売価格は45ml 7,500円です。この製品は、4-メトキシサリチル酸カリウム塩と、 トラネキサム酸を美白の有効成分としていますが、4-メトキシサリチル酸カリウム塩は、サリチル酸の誘導体ですので、実際にはトラネキサム酸がメインの美白成分です。以前の記事「その美白化粧品が効かない理由~トラネキサム酸編~」で記述したように、市販の化粧水のトラネキサム酸の濃度はおおよそ0.5%~1%前後と推察されます。一方で、当院のトラネキサム酸の化粧水は、3%の高濃度で55ml 1,980円です。

再生因子が配合された化粧水やクリームは、市販品では数万円の価格で売られていることも多く、当院の調剤化粧品と比較すると何倍もします。再生因子配合の化粧品の価格については、「医師から見たEGF化粧品徹底比較」をご参照ください。

化粧品の原価率は15%、原料代は5%以下が普通

なぜこのような大きな価格差が起こるのでしょうか。いろいろな要因がありますが、以下を見るとわかりやすいと思います。

資生堂の決算書から、化粧品の本当の原価率を計算してみます。2015年の資生堂の売上は7,631億円、売上原価は1,960億円で原価率は25.7%です。広告費・人件費・経費を含めた販売管理費は5,294億円で69.4%を占めています。

これだけ見ると、1つ6,000円の化粧品は、製造原価1,542円で作られ、販管費に4,164円使用され、会社へ残る利益は294円と考えるでしょう。しかし、この6,000円というのは、資生堂から卸問屋に卸される価格です(卸売価格A)。卸問屋は一般的に10%の利益をとって、それを百貨店やドラッグストアへ卸します(卸売価格B)。卸売価格Aが6,000円の卸売価格Bは6,667円(利益10%)になります。百貨店やドラッグストアは一般的に35%の利益をとって、我々消費者へ売ります(小売価格)。卸売価格Bが6,667円の化粧品の小売価格は10,257円(利益35%)になります。

製造原価1,524円は、小売価格10,257円に対して、約15%になります。この製造原価には、原料代のほかにボトル・瓶・パッケージ代やデザイン料などが含まれています。販売部門での人件費は販売管理費に含まれていますが、製造部門での人件費は製造原価に含まれます。製造部門の研究開発費や光熱費も製造原価に含まれます。これらを合わせると、製造原価のうち、純粋に原料代が占める割合は3分の1以下になります。つまり、原料代は5%以下になります。

化粧品の種類によっては、原料代が1%~3%ということもあり、「原価100円の化粧水が1万円で売れる。」などと言われますが、あながち嘘ではありません。この原料代の率は、資生堂だけではなくコーセーやポーラなどの他のメーカーもほとんど同じです。

原料代 513円・・小売価格の5%

製造原価 1,524円・・小売価格の15%


卸売価格A 6,000円

卸売価格B 6,667円(利益率10%)

小売価格 10,257円(利益率35%)

当院の調剤化粧品の原価率は70%、原料代は40%

調剤化粧品の場合、製造は院内で行い、販売(処方)も院内で完結します。当院では外部委託をしていないため、研究開発・調剤内容・ボトルやラベルのデザインなどはすべて院長である私が行っています。私の人件費は無視したとして、製造過程に割いているスタッフの人件費や光熱費、ボトルやラベルの費用などを考えると、原価率は約70%です。原価率70%でやっていける理由は、販売部門における広告費や人件費といった販売管理費が発生しないからです。また、原料代は、大手の製造メーカーのような大量仕入れによるスケールメリットはありませんが、30%~45%の費用をかけることが可能です。

大手の化粧品メーカーは、デパートの一等地の賃料、販売員のコスト、テレビ・インターネット・雑誌などの媒体への莫大な広告宣伝費を使用しています。卸問屋を経由して、小売店へ流通しますので、中間マージンや流通コストもかかり、原料代が10%を超える化粧品を作ると採算が取れません。

当院の調剤化粧品の場合、ホームページやブログ、院内で掲示しているパンフレットなどはすべて院長が作成していますので、広告費はゼロに近い(実際には5%程度)です。(調剤化粧品は医薬品扱いとなるため、広告することができません。HPやブログ、院内パンフレットは、法律上広告ではなく、院内資料扱いです。)さらに、販売部門の人件費は、医薬品と同じ扱いで処方しておりますので、クリニック業務の一環として行っており、こちらも費用がほとんどかかっていません。

原料代 792円・・小売価格の40%

製造原価 1,386円・・小売価格の70%


小売価格 1,980円(利益率25%~30%)

なぜ1,980円の調剤化粧品が、5倍以上の価格の化粧品よりも、有効成分や美容成分を多く入れることができるのかがわかると思います。

調剤化粧品は、市販品とまったく異なる

上記の原価率や原料代の違いから分かるように、当院の調剤化粧品は、市販品よりも有効成分、美容成分を高濃度で配合しており、はっきり言えば比較になりません。

調剤化粧品は、シミやニキビ跡などの美白、アトピーや乾燥性皮膚炎などの保湿、アンチエイジング(抗老化)といった医療用の使用用途になるため、有効性も市販の化粧品とは比較になりません。医薬品扱いのため、一部の調剤化粧品には、ヒトプラセンタや肌再生因子などの医薬品原料を配合することができ、その点でも市販の化粧品や医薬部外品と異なります。

有効成分濃度が高いので、肌に合わないなどの症状が出る可能性もゼロではありませんが、安全性が高い成分を厳選して使用していますから、日常の肌ケアとしても最適です。有効成分以外の成分にもこだわっており、スタッフや患者さんの意見を聞いて、肌に刺激がなく、使い心地の良い処方内容にしています。

化粧品ジプシーの方、肌に合う化粧品がなくてお困りの方は、ぜひ当院の調剤化粧品をお試しください。9月以降になりますが、遠隔診療を開始する予定ですので、定期的な通院が難しい患者さんでも、オンラインで処方できるようになります。

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院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]