肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

ホリエモンのすきやばし次郎の批判

time 2016/08/10

ホリエモンが批判していたすきやばし次郎の「10年修行して玉子が焼ける」寿司職人の悪しき習慣は、医療の世界でもあります。指導医によって研修医のその後が大きく変わるのです。何も教えず見て学べタイプの指導医は少なからずいて、研修医がかわいそうであるとともに、そんな教育を受けた研修医は、その後の医療も危なっかしく、同期にも差を付けられてしまうことがあります。

 私の場合は、医者3年目でひどい指導医に当たりました。その指導医の下で働くようになってから、今までは他の指導医と一緒に行っていた心臓カテーテル検査や手術に、一切入らせてもらえなくなりました(もちろん、私が何か医療ミスをしたとかではありません)。何を聞いても無視され、理不尽なことで怒鳴られるということが1年続き、本当に身心ともに疲れてしまいました。幸い研修医なって最初の2年間は、素晴らしい指導医の下で、症例数が豊富な病院で勤務していたこともあり、一通りの知識と経験が備わっていたため、その指導医がおかしな人格だと早めに気付くことができました。しかし、もしも私が医者1年目で知識もない時期にそんな指導医に当たっていたら「自分が悪い。自分は何もできない。」と思い込んでしまい、その後の医者としての成長性は、大きく鈍化していたと思います。

医療は電子化がどんどん進み、新しい電子カルテ、予約システム、画像診断装置など、新しく覚えることが山のように出てきます。また、クリニックでは、院内のシステムや、診療の流れ、患者対応の仕方など、既存の病院やり方とは異なる、独自のものが沢山出てきます。

医師は20代から医療チームのリーダーとして、看護師やコメディカルなどの医療スタッフに対して指示や教育を行う立場にあります。私も研修医や医療スタッフを教育する機会が多いのですが、その中で感じることは、「若い人のほうが新しいことを飲みこむ力、習得する能力は断然高い」ということです(もちろん、個人差はあります)。

10代から寿司職人の世界に飛び込んだ若いピュアな人は、その理不尽な世界が当たり前と感じ、「自分の力がないから10年修行して玉子を焼けるようになるのが当然」なのだと思い込んでしまうでしょう。これは、医学的に言うと一種の「洗脳状態」です。若い料理人の才能、経験をできるだけ伸ばしてあげようという思いで、厳しく接しているのであれば問題はありませんが、理不尽に厳しくする根底には「自己保身」があります。つまり、若い人を教育するとあっという間に自分は追い抜かされてしまい、自分の地位が危うくなる、競合になって利益を奪われる、という考えが根底にあり、それが過度に理不尽な世界を作ってしまいます。(厳しく後輩に接してしまったことがある人は、自己保身やその後輩への嫉妬が、自分の心の底に少しでもなかったか、 胸に手を当ててよく考えて見て下さい。)

確かに、料理人の数は多く、競争社会です。しかし、すきやばし次郎の「10年修行して玉子が焼ける」というのは、何か外から見ている我々にはわからない、店独自の掟や思想を10年がかりで伝えたり教えたりしているのかもしれませんが、やはり行き過ぎです。若い人は、有名な店だからというのに惑わされず、本当に自分のことを思って育ててくれる店、大将を見つけるべきです。年を取ると物覚えが悪くなりますし、頑固になり、柔軟性がなくなります。10代、20代、30代という若さで過ごす10年にどれほどの価値があるのか、どれほどの可能性があるのかは、年をとって初めてわかります。理不尽な世界で我慢するというのも、大切な経験の一つにはなるかもしれませんが、若い時期の大切な時間を無駄にせず、自分の能力を過小評価しないで、どんどん新しいことにチャレンジするべきだと思います。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]