肌のクリニック院長の肌ブログ

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ヒアルロン酸あれこれ | 低分子ヒアルロン酸のリスク

time 2016/10/31

ヒアルロン酸

ヒアルロン酸の詳しい説明は他のサイトに譲りますが、ヒアルロン酸と聞くと「保水力があって肌にいいもの」というイメージを抱く人が多いのではないでしょうか?

ヒアルロン酸はその保水力が注目されて、さまざまな化粧品に配合されているだけでなく、炎症を鎮める抗炎症作用があり、関節痛やテニス肘などの治療にも使われています。

変形性膝関節症やリウマチでは、関節の軟骨がすり減ったり破壊されて関節内に炎症が起こりますが、ヒアルロン酸を関節内に注射して、減少した関節液の粘度を高めて関節の動きをスムーズにし、炎症を鎮めて痛みを取り除きます。

また、ヒアルロン酸は軟骨自体の生成にも関与しており、ヒアルロン酸を関節内に注射することで、軟骨組織の弾性が回復することも報告されています。

ヒアルロン酸は体内では皮膚だけでなく、眼や筋肉などの組織、関節液、血液、リンパ液などにも広く分布しています。正常組織中のヒアルロン酸の分子量は200万以上であり、非常に大きな分子です。

化粧品中のヒアルロン酸

ヒアルロン酸は水溶性なので、化粧水に配合されることが多い原料です。ほとんどのヒアルロン酸原料は粉状(粉末)になっています。保水力が高く高分子のため、0.1%とごく少量混ぜるだけで、トロミと粘性がある化粧水が出来上がります。

市販の化粧水のしっとりタイプや高保湿タイプには、だいたいヒアルロン酸ナトリウムの表記があると思います。

分子量が大きいため角層には浸透せず、肌の上に残って水分を保持します。そのため、皮膚の表層の保護膜として働きます。

化粧水を塗ったばかりの時は、ヒアルロン酸がたっぷり水分を含んだ状態で肌の上に乗っているので、角層の水分の蒸発を防ぎ、高い保湿効果を発揮します。水だけだと蒸発しやすいのですが、ヒアルロン酸が水分子とくっつくことで長時間肌の上で水を保持し、蒸発を防ぎます。

後述する「エレクトロポレーション」という電気の力で肌に有効成分を届ける治療がありますが、エレクトロポレーションを使っても、高分子ヒアルロン酸ほどの巨大な分子はまず角層にも入りませんので、高分子ヒアルロン酸はエレクトロポレーションの導入液には不向きだと考えられます。

エレクトロポレーションについては、当院HPの「エレクトロポレーションによる美肌治療」のページもご参照ください。

最近ではヒアルロン酸の原料開発が進み、低分子のヒアルロン酸原料が開発されています。低分子のヒアルロン酸は分子量が1万以下のものを指します。低分子ヒアルロン酸は分子量が小さいので、化粧水に混ぜてもサラサラしたままです。トロミがある化粧水の使い心地が好きな方には物足りないかもしれません。

低分子ヒアルロン酸なら肌に浸透する?

低分子ヒアルロン酸といっても、分子量は1万です。他の化粧品原料と比較すると、高分子であることは変わりなく、角層に浸透できる大きさではありません。

イオン導入用の化粧水で低分子ヒアルロン酸入りのものがありますが、イオン導入でも角層に浸透させることはできません。イオン導入で浸透させられる分子量は500以下ですので、分子量が1万の低分子ヒアルロン酸はまず無理であることがわかります。

ヒアルロン酸原料名 分子量
①ヒアロキャッチ(キューピー) 80万~120万
②ヒアロオリゴ(キューピー) 1万以下
③マイクロヒアルロン酸FCH(キッコーマン) 5000以下
④ヒアロナノ(キューピー) 2000以下
⑤ヒアルロン酸オリゴ糖4糖(HA4)(糖質化学研究所) 820
⑥発酵ヒアルロン酸(HA2)(ジュジュ化粧品) 379.1

ヒアルロン酸はN-アセチル-D-グルコサミンと D-グルクロン酸という 2種類の糖が交互に繋がった枝分かれのない1 本の鎖状であり、組織内では分子同士が絡み合って存在しています。

⑥はその2つの糖、⑤は2つの糖が2つ繋がった4つの糖という構成で、ヒアルロン酸を構成するヒアルロン酸オリゴ糖という分類になります。ヒアルロン酸の最小単位と考えてください。

HA4は分子量が約800ですが、角層の荒れている部分などは細胞間隙が大きくなっているため、ぎりぎり浸透する可能性はあります。HA2は十分浸透できる大きさです。

イオン導入の20倍の浸透力とされる「エレクトロポレーション」ではどうでしょうか?エレクトロポレーションは、高圧の電気パルスをかけることで細胞膜に微小な穴を空け、高分子も肌に浸透させることができるとされています。しかし、分子量100万以上の巨大分子であるヒアルロン酸を角層内に浸透させることは難しいと考えられます。低分子ヒアルロン酸であれば導入できる可能性は十分ありますが、後述する炎症を誘導するというリスクがあるために、当院ではエレクトロポレーションの導入液に低分子ヒアルロン酸を配合することを見送りました。

ちなみに水溶性VC誘導体の中で最も浸透力が高いVCエチルの分子量は204、VCグリセリルは250、トラネキサム酸の分子量は157ですので、VC誘導体やトラネキサム酸がイオン導入に適していることが分かると思います。

低分子ヒアルロン酸のリスク

保水力があって抗炎症作用もあるヒアルロン酸ですが、実は分子量によって全く逆の働きをします。

分子量が70万以上のヒアルロン酸には血管の新生を抑制して炎症を抑える作用がありますが、分子量が50万以下のヒアルロン酸には、血管新生を促して炎症を増悪させる作用が報告されています。(※1)

つまり、低分子のヒアルロン酸が炎症を促進する一方,高分子のヒアルロン酸は炎症を抑制するため、分子量によって生理活性が異なることが分かっています。

医療分野でも関節内注射には、低分子のヒアルロン酸は用いられず、分子量90万(アルツ)~190万(スベニール)といった高分子のヒアルロン酸が用いられています。また、プチ整形で用いられるQmed社のヒアルロン酸(レスチレン)の分子量は100万以上です。

これは、高分子ヒアルロン酸のほうが粘度があって生体内でも分解・吸収が遅いということもありますが、低分子ヒアルロン酸の効果やリスクがはっきりしていないということも理由の一つです。

ヒアルロン酸オリゴ糖はどうでしょうか?

低分子HAあるいはある分子サイズのHAオリゴ糖は、サイトカイン、ケモカインおよびMMPなどの誘導を介して、炎症、細胞の浸潤・移動および細胞外基質分解を亢進させる。また、HAオリゴ糖は、炎症および癌の進行においては、血管新生誘導物質としてはたらくことが報告されている。HAオリゴ糖は、炎症および癌においてはその悪循環の一要因となっている。
引用 浅利 晃「ヒアルロン酸オリゴ糖の新規機能

上記のように、ヒアルロン酸オリゴ糖も炎症の促進や血管新生に作用しており、低分子ヒアルロン酸と一部同様の作用を有しています。ヒアルロン酸オリゴ糖の研究をしている浅利氏によると、ヒアルロン酸は「オリゴ糖に低分子化されると、新たな機能・活性を獲得する」という報告をしています。

4糖のHA4と6糖のHA6では生理活性が異なることなども報告されており、ヒアルロン酸オリゴ糖一つとっても、すべてが同じように作用するわけではないようです。

ヒアルロン酸オリゴ糖を含め、低分子ヒアルロン酸を医薬品や食品、化粧品に応用するためには、まだまだ多くの研究やデータが必要だと感じます。

※1West DC et al.「 Angiogenesis induced by degradation products of hyaluronic acid.」 Science. 228:1324-1326, 1985

その他のヒアルロン酸

加水分解ヒアルロン酸やヒアルロン酸オリゴ糖などの低分子ヒアルロン酸の他に、化粧品に配合されているヒアルロン酸には以下のものがあります。

アセチルヒアルロン酸・・・ヒアルロン酸の水酸基の一部をアセチル基に置換したヒアルロン酸です。それにより、親油性を獲得するため、親水性と親油性の両方の性質を持ち、肌への馴染みが良くなります。ただし、両親媒性を獲得したからと言って、高分子ですので角層へ浸透するわけではありません。

ヒアルロン酸ヒドロキシプロピルトリモニウム・・・プラスに荷電させたヒアルロン酸で、髪や肌へ吸着するため、吸着型ヒアルロン酸とも呼ばれています。キューピーから出ている「ヒアロベール」などの原料がこれに当たります。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]