肌のクリニック院長の肌ブログ

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化粧品の防腐剤あれこれ | 防腐剤無添加化粧品

time 2016/12/01

化粧品の防腐剤

化粧品の成分の中には、精製度は異なりますが、食用で使われる成分もたくさん含まれています。しかし、食べ物はすぐに腐ってしまいますが、化粧品はなかなか腐りませんよね?

それは、市販の化粧品には必ず防腐剤を入れているからです。市販の化粧品は未開封で3年間品質を保持しなければならないという規定があります。

その規定は破っても良いのですが、3年以内の場合は食品と同様に消費期限を明示しなければなりません。市販の化粧品で消費期限が書かれているものはごくわずかですので、99%以上の化粧品は最低でも3年間腐らないように防腐剤を入れなければなりません。

化粧品に配合される防腐剤は「ポジティブリスト」と言って、厚生労働省が定めたもの以外は使用できないという規制があります。ポジティブリストで規制されている成分は、防腐剤、紫外線吸収剤、タール色素の3つです。

防腐剤は、「主に外部からの微生物の混入に対して、微生物を増殖させないようにし品質を保つもの」なのに対し、殺菌剤は、「ターゲットとする微生物を死滅させるもの」という違いがあります。しかし、殺菌剤は防腐剤としての作用を併せ持つものも多く、ここでは一緒に紹介していきます。

主な防腐剤・殺菌剤

パラベン

最もよく使われる防腐剤で、水溶性で広範囲の微生物に抗菌力を持っています。化粧品には、ブチルパラベン、プロピルパラベン、エチルパラベン、メチルパラベンの4種類が良く使われ、抗菌力もこの順番で強くなります。その他にベンジルパラベンやイソプロピルパラベン、イソブチルパラベンなども使われることがあります。

メチルパラベンは抗菌力は最も弱いのですが、肌への刺激が最も少なく、敏感肌用の化粧品に良く配合されています。また、パラベンを複数組み合わせて殺菌力を上げ、総量を少なくしている化粧品もあります。

防腐剤の多くは旧表示指定成分に指定されており、アレルギー性や毒性が多少なりともあります。そのため、パラベン類は合計で1%以下の配合量までと規制されています。実際の化粧品を製造する際には、パラベンの配合濃度は合計で0.1~0.3%がほとんどです。

ちなみにパラベンは水溶性ではなく、油溶性です。つまり、水にほとんど溶けません。メチルパラベンは、辛うじて0.25%水に溶けますが、一番抗菌力が弱いため、0.25%では品質を保つのにぎりぎりの量です。そのため、ほとんどの市販の化粧品は、合成界面活性剤を化粧水へ混ぜて、パラベンを溶かし込んでいます。

フェノキシエタノール

パラベンの次によく使われている防腐剤です。抗菌力はパラベンより弱いのですが、パラベンが効き難いグラム陰性菌に有効です。抗菌力を上げるために、パラベンと一緒に用いられることもあります。

フェノキシエタノールは、もともと玉露に含まれている揮発成分として発見されました。天然のものから発見されたため、安全というイメージがあるかもしれません。また、旧表示指定成分に指定されていないため、「無添加」を謳う化粧品の多くにも配合されています。しかし、実際には指定されていないだけでアレルギー性や皮膚刺激性はパラベンと同等であり、殺菌力がパラベンより弱い分、パラベンよりも多くの量を配合しなければ、防腐効果は得られません。(パラベンが0.1~0.3%なのに対し、フェノキシエタノールは0.3~0.8%)

結局、パラベンが肌に合わない人もいれば、フェノキシエタノールが肌に合わない人もいるわけで、個々人の肌や体質に合ったものを選ぶのがよいでしょう。

ちなみに、フェノキシエタノールも油溶性で水にほとんど溶けません。そのため、パラベンと同様に、市販の化粧水にフェノキシエタノールが使われている場合、合成界面活性剤も一緒に配合されているはずです。

安息香酸・安息香酸Na

安息香酸は水に溶けにくく、酸性環境下で抗菌力を発揮しますがPH5以上になると抗菌力が消失します。安息香酸ナトリウムは水に溶けやすく、PH8以下まで抗菌力を発揮しますので、化粧品には安息香酸よりも、安息香酸Naのほうが良く使われます。どちらも殺菌作用はそれほど強くないため、パラベンなどの他の防腐剤と併用されることが多くあります。

食品の防腐剤にも利用されており、安息香酸Naは水溶性であるため、清涼飲料水や栄養ドリンクに添加されています。清涼飲料水中の安息香酸Naが酸化防止剤として添加されているビタミンCと反応して、発癌性のあるベンゼンを生成するとして一時期問題になったことがありました。安息香酸Naそのものの毒性は低いとされていますが、他の成分との配合変化などに気を付けなければならないという例の一つだと考えられます。

デヒドロ酢酸Na

細菌だけでなく、カビなどの真菌類にも幅広く抗菌作用を発揮します。デヒドロ酢酸のナトリウム塩は水に溶けやすくなっており、不潔になりやすいマスカラなどを始め、広く化粧品に用いられています。食品ではバターやマーガリンなどに使用されています。

配合濃度は0.5%以下に規制されています。

ヒノキチオール

ヒノキ科の樹皮から抽出されるヒノキ油やヒバ油、ウェスタンレッドシダー油の中に存在します。現在は合成由来のものも広く使われています。特有の匂いがあり、広範な微生物に抗菌作用を発揮します。ヒノキチオールは防腐剤でありながら、メラニン生成抑制などの美白作用も報告されています。

ヒノキ風呂や壁材など、昔からヒノキやウェスタンレッドシダーは腐りにくい木として、建築材料に使われてきましたが、それは天然の防腐剤であるヒノキチオールを含有しているからです。

歯周病の原因であるカンジダなどの真菌に有効なため、歯槽膿漏の予防目的として歯磨き粉に配合されることもあります。

フェノキシエタノールと同様に旧表示指定成分ではないため、無添加を謳った化粧品に配合されていることも多いのですが、実際はパラベン、フェノキシエタノールよりも毒性は強く、アレルギーの報告もあります。肌に合うかどうかで選びましょう。

o-シメン-5-オール

イソプロピルメチルフェノール。常温では針状の結晶です。強い殺菌力があり、広い範囲の微生物やカビに効果を示します。人臨床試験でアレルギーの報告はなく、皮膚刺激性はほとんどありません。ハンドソープ、化粧品、育髪トニック、デオドラントなどに用いられています。

ベンザルコニウムクロリド

陽イオン界面活性剤(カチオン界面活性剤)です。細菌の細胞膜はリン脂質で構成されており、マイナスに帯電しています。そこにカチオン界面活性剤が吸着すると、細胞膜が変性して機能が失われ、細胞死へ導かれるため、殺菌作用を発揮します。

医療機関で手指消毒などに使用する逆性せっけんの成分がこれで、「オスバン」「ヂアミトール」などの商品名で販売されています。詳しくは以前の記事「化粧品の界面活性剤あれこれ」をご参照ください。

酸化銀

ノンパラベン、ノンフェノキシエタノールを謳っている製品に酸化銀が防腐剤として配合されていることがあります。ポジティブリストや旧表示指定成分ではないことから、防腐剤無添加と謳っておいて、酸化銀が入っていることはよくあります。

酸化銀の殺菌作用は、水溶液中の銀イオンの酸化触媒作用により、酸素を活性酸素に変えて殺菌作用を発揮することと、銀イオンが細菌の細胞膜を通過して、細胞内の酵素の働きを阻害して細胞死に導きます。

酸化銀は酸化触媒作用がありますから、当然肌に塗ると肌の酸化を促進させる可能性があり、化粧品にはお勧めしません。

防腐剤無添加の化粧品のからくり

防腐剤無添加、防腐剤フリーと書かれている化粧品のほとんどには防腐剤が使われています。それは、3年間という長期間製品の品質を保たなければならないからです。

それでは、どのようにして防腐剤無添加という表示を使っているのでしょうか?

一つは防腐剤フリーの後に、注釈で「パラベン・フェノキシエタノール無添加」となっている場合があります。代表的な防腐剤であるパラベン、フェノキシエタノールは使用していませんが、他の防腐剤や殺菌剤を使用しています。

もう一つは抗菌作用がある多価アルコールを配合している場合です。例えば、保湿剤としてよく使用するDPGやBG、ヘキサンジオール、ペンチレングリコール、エチルヘキシルグリセリンなどの多価アルコールは、静菌作用があります。これらの多価アルコールは防腐剤ではないため、防腐剤フリーと表示できるわけです。

ただし、抗菌力の弱い多価アルコールで3年間の使用期限を保とうと思うと、防腐剤よりもずっと多くの量を配合しなければなりません。例えば単体で使用する場合は、BGの場合は15%~20%以上、ヘキサンジオールの場合は2%以上は必要になってきます(実際には、他の多価アルコールやエタノール、界面活性剤などと組み合わせて使いますので、もっと低い配合率になっていることがほとんどです)。防腐剤と比較すれば、毒性は非常に低く、刺激性も少ないのですが、量を多くすれば刺激が出てくる場合もあります。例えばBGは、1%程度の方にアレルギーを起こすことが報告されており、保湿剤として考えるとアレルギー報告がやや多い成分でもあります。それは、ヘキサンジオールやペンチレングリコールなどの防腐作用のある多価アルコールにも言えます。

エタノール(アルコール)などの殺菌作用がある成分と混合したり、多価アルコールを複数組み合わせたりして抗菌力を上げているケースもあります。マンダムはヘキサンジオールとカプリルグリコールの組み合わせで防腐剤の代わりとして使用できることを特許申請し、特許を取得しています。(しかし刺激性の問題があるのか、その組み合わせの化粧品をマンダム自体あまり使っていないようです。)

オーガニック化粧品やナチュラルコスメなどは、ローズマリーエキスやワサビエキス、グレープフルーツ種子エキスなど、抗菌作用をもった植物エキスと、BGやエタノール、ヘキサンジオールなどの組み合わせで防腐効果を出しています。

しかし、植物エキスの防腐効果は非常に弱く、やはりそれなりの量を配合しなければなりません。多く配合すれば皮膚刺激性が強くなるというデメリットが生じますから、防腐剤フリーだからいい!オーガニックだから安全!ということではなく、自分の肌に合っているかどうかで決めるしかないでしょう。

本当の防腐剤無添加の化粧品

このように、3年間の使用期限が必要な市販の化粧品には、本当の防腐剤無添加のものは期待できません。防腐剤は品質保持のために必要なだけであり、肌には必要がない成分ですから、できれば無添加の化粧品を使いたいと考えるでしょう。

それでは、本当の防腐剤無添加の化粧品はあるのでしょうか?

あります。それは自分で手作りすれば良いのです。少々めんどくさいかもしれませんが、今は化粧品原料が手軽にネットで購入できますし、作り方を教えるサイトも増えてきています。

化粧水を自分で作って、冷蔵保存で1週間で使い切るようにすれば、本当の防腐剤無添加の化粧水を毎日使うことができます。おまけに、自分の肌の調子に合わせて、自分好みにいろいろと配合を変えることもできます。

「手作りの化粧品は知識がない素人が作ると危ない」みたいなこと言う人がいますが、だいたいそういう人は化粧品を売る側の人間ですね。

確かに、間違った情報が書いてあるサイトは沢山目につきます。しかし、すごく危険なことが書かれているわけではありません。(医療情報を適当に書いているWELQのほうがずっと危険です。笑)

もともと化粧品は医薬品とは違って、人体に影響を及ぼさないような原料が主に使われていますから、安全性は非常に高いです。特に一般の方が手に入れられるような原料で、危険なものはほとんどありません(もちろん、例外はありますが、きちんと調べれば過度に怖がる必要はありません)。

手作り化粧品が危ないという人は、料理を作るのも危ないと言うのでしょうか?知識がない素人が料理を作れば、多少は危険な(まずい)料理ができるかもしれませんが、人体に危険を及ぼすほどではないでしょう。そもそも、その料理を初めて作る場合は、作り方を調べてから作りますよね。

料理がまずければ、次回はもっとうまく作ろうとして、だんだん上手になっていきます。作った化粧品が肌に合わなければ、次回は違う成分を使ったり、いろいろと工夫をして上手になっていきます。

特に化粧水なんて水溶性の成分を混合するだけですから、料理を作るよりも簡単です。フグの調理をするわけではあるまいし、化粧水ごときで手作りは危険とか言っている人を見ると、なんだかなあと思ってしまいます。

毎日料理は作るのに、週に1回の化粧水を作らないなんて勿体ないので、ぜひチャレンジしてみてください。

一度化粧水を作り出すと、添加物だからけで3年も腐らない市販の化粧水は、使うのが嫌になってしまうと思います。水道水でも1週間もするとカビが生えてくるのに、1年前の化粧水は何の変化もなく腐らないということに、違和感を感じるかもしれません。私も自分で化粧水を作り出してから、市販の化粧水は10年以上一度も使っていません。今はクリニックで調剤化粧品を作ってますから、それを使用しています。

化粧水作りが面倒な方や、忙しくて作れないという方は、ぜひ当院の調剤化粧水をお使いください。当院の調剤化粧水は、冷蔵保存2ヶ月のものについては、防腐剤は配合しておらず、代わりにヘキサンジオールを少量(1%程度)だけ配合しています。その他の防腐剤、エタノール、界面活性剤、香料、着色剤、酸化防止剤、キレート剤なども配合しておらず、手作りにかなり近くなっています。

防腐剤フリーで使用期限は冷蔵保存で2ヶ月間と短くなっていますので、必ず要冷蔵で使用期限をお守りください。

防腐剤は長年使われており、安全性が高いものですので過度に気にする必要はありませんが、上記の防腐剤の知識を頭に入れておくことで、自分の肌に合う成分、合わない成分がよりはっきり分かるようになります。そして、理想を求めるのであれば、手作りが良いというお話でした。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]