肌のクリニック院長の肌ブログ

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油性成分あれこれ | ニキビを悪化させるオイル

time 2016/11/16

化粧品に含まれている油性成分は「オイル」と総称して呼ばれますが、実は化学構造によっていくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。今回は、にきびを増悪させるかどうかという観点も踏まえて、化粧品によく配合される油性成分を解説していきます。

水溶性成分については以前の記事を参照してください。

化粧品の水溶性成分・保湿成分あれこれ

化粧品に使われているオイル

オイル=ニキビ悪化と思われている方が多いのですが、中にはニキビの原因になりにくいものも存在します。

①炭化水素

炭素(C)と水素(H)だけでできた油性成分です。良く目にする化粧品成分として、ワセリン、ミネラルオイル、スクワランがこれに当てはまります。化粧品に使われているその他の炭化水素は、流動パラフィン、パラフィン、水添ポリイソブテン、イソヘキサデカン、イソドデカンなどがあります。

②高級脂肪酸

炭化水素にカルボシキル基(-COOH)が結合したもの。ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸などがあります。

③高級アルコール

炭化水素に水酸基(-OH)が結合したもの。ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、セタノールなどがあります。カチオン界面活性剤と高級アルコールを一緒に配合すると、長期間安定な粘度を持つゲル状になるため、乳化安定剤や感触調整剤目的で使用されます。

④油脂

高級脂肪酸3分子とグリセリン1分子が結合したものをトリグリセライド(トリアシルグリセロール、中性脂肪)と呼びますが、油脂という言葉もほとんど同義に使用されています。オリーブ果実油(オリーブオイル)、アルガニアスピノサ核油(アルガンオイル)、ツバキ油、マカダミアナッツ油、シア脂(シアバター)、ココナッツ油、アーモンド油、馬油などの油性成分がこれに当てはまります。

⑤ロウ(ワックス)

高級脂肪酸と高級アルコールが結合した構造を持つもの。キャンデリラロウ、ホホバ種子油(ホホバオイル)、ミツロウ、ラノリン、オレンジラフィー油などがあります。

⑥エステル油

天然の油脂やロウを合成により作ったものがエステル油です。化粧品に使用されるエステル油は、ミリスチン酸イソプロピル、エチルヘキサン酸セチル、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸エチルヘキシル、イソノナン酸イソノニル、ジステアリン酸グリコールなどがあります。

⑦シリコーン

ケイ素と酸素がつながってできたシリコーンも、化粧品によく使わる油性成分です。ジメチコン(類似成分のアモジメチコン、ジメチコノール、フェニルトリメチコン)、シクロペンタシロキサン、メチルフェニルシロキサンなどがあります。

ワセリンはニキビに効果がある?悪化させる?

ニキビを悪化させる可能性が最も高いのは「油脂」です。油脂はアクネ菌のえさになり、増殖を促すからです。

ワセリンは「炭化水素」ですから、基本、ニキビの原因にはなりません。しかし、ワセリンがニキビに効果があるという記事をどこかで読んで、ワセリンで顔を保湿していたらニキビが増えてしまったという患者さんは結構いらっしゃいます。

これはどのような油性成分にも言えることですが、アクネ菌を増やす直接の原因にはならなくても、油性成分自体がニキビの原因になることはあります。

アクネ菌は嫌気性菌と言って、空気に触れることを嫌がります。空気が十分あるところでは繁殖できないため、毛穴の奥深くに潜んでいるのです。

ワセリン自体はアクネ菌のえさにならなくても、粘度が高くベッタリとしているため、皮膚に油性の膜を張り、毛穴を詰まらせる原因になります。嫌気性菌のアクネ菌は、毛穴が詰まって空気がなくなるとがぜん元気になり、どんどんと増殖します。油性成分自体がニキビの原因になるのはこのためです。

ちなみにワセリンは石油から作られますが、精製度によって3種類あります。白色ワセリン、プロペト、サンホワイトの順で精製度が高くなり、不純物が取り除かれています。不純物の中には酸化しやすい二重結合を持った不飽和脂肪酸などが含まれていますから、肌への影響を考えるのならサンホワイトの使用をおすすめします。

脂肪酸の酸化は肌の炎症を引き起こすため、白色ワセリンよりプロペト、プロペトよりサンホワイトのほうがニキビの原因になりにくいとも言えますが、やはり先述の理由から、サンホワイトでもニキビが悪化してしまう患者さんもいますので、原則、ニキビがある部位には使用しない方が良いでしょう。

ワセリンは医療用でも様々な軟膏基剤として使用されていますが、ニキビ治療に使われる外用剤には基剤として使われていません。その理由は、ワセリンがニキビを悪化させるリスクがあるからです。

ニキビ治療用の外用剤では、ダラシンTゲル、ダラシンローション、ディフェリンゲル、ベピオゲルなど水溶性基剤が用いられています(ワセリンが使われているケースもありますが、アクアチムクリームなど、クリーム基剤と一部として使用されている程度です)。

炭素と水素でできたワセリンは、酸素分子を持たないために水になじみません。そのため、皮膚に塗ると油性の保護膜として働き、肌からの水分の蒸発をしっかりと防いでくれます。安全性が高く生体に悪影響を及ぼすことがほとんどないため、傷口や粘膜に使用しても問題を起こさず、優秀な保湿剤であることは確かです。

また、ワセリンの保護膜効果により「湿潤療法」と同じ効果が得られるため、擦り傷などにワセリンを使用すると創傷治癒が促され、跡になりにくくなります。一部のネット情報で「ニキビ跡にワセリンが効く」と書いているのは、ワセリンの創傷治癒効果のことを言っているのだと思います。

総じて、ワセリンがニキビを悪化させることはありますが、程度問題で、ニキビが出来にくい方は使用しても問題ありませんし、またニキビが出来やすい方が使用しても、クリーム基剤の一部にワセリンが配合されている程度では、ニキビは悪化しませんのであまり心配する必要はありません。

スクワランはニキビに効果がある?悪化させる?

スクワランもワセリンと同じ「炭化水素」です。油脂ではないので、アクネ菌のえさにはなりません。

スクワランは天然には存在しませんが、スクワレンは天然に存在し、ヒトの皮脂中にも12%含まれています。スクワレンは酸化しやすいため、そこに水素を添加して安定化させたのがスクワランです。

サメの肝油中に多く含まれており、化粧品原料としてもサメの肝臓から抽出したものが使用されていますが、近年はベニバナやコーンなどから抽出した植物性のスクワランも多くなってきています。

スクワランは肌のバリア機能を高め、ニキビや湿疹を予防する効果が認められています。そのため、スクワランがニキビを改善する(もしくは悪化させない)効果を持つというのは正しいです。

ワセリンよりもさらっとしており、毛穴を詰まらせる原因にもなりにくいため、ニキビが出来やすく、なおかつ乾燥も気になるという患者さんにお勧めできます。

ただし、皮脂が多くてニキビが出来やすい方が使うと、過剰な油で毛穴が詰まりやすくなる方もいます。先述した通り、全ての油性成分はニキビの原因になり得ますから、ワセリンと一緒で、あくまで程度問題であり、肌に合う合わないは使ってみて判断する必要があります。

脂肪酸はニキビに効果がある?悪化させる?

アクネ菌を含めて皮膚の常在菌は、皮脂中のトリグリセライドを餌として分解し、脂肪酸とグリセリンを作り出します。脂肪酸は、汗の乳酸と混ざって皮膚の表面を弱酸性(PH4.5~6.0)に保ち、悪玉菌が増殖し辛い環境にしてくれます。

脂肪酸自体はアクネ菌が分解したものですので、アクネ菌のエサにはなりませんし、肌を弱酸性に保つことで、ニキビや炎症の原因となる黄色ブドウ球菌などの繁殖を抑えますから、ニキビに効果があるとも言えます。

しかし、脂肪酸が酸化されると(過酸化脂質)、それがニキビの炎症の原因になることが報告されていますので、特に酸化されやすい脂肪酸は要注意です。酸化されやすい脂肪酸とはどのような脂肪酸でしょうか?

脂肪酸は「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分類され、不飽和脂肪酸はさらにn-9系の一価不飽和脂肪酸、n-6系とn-3系の多価不飽和脂肪酸に分類されます。

飽和脂肪酸=酸化しにくい、不飽和脂肪酸=酸化しやすいということを覚えておいてください。種類については、飽和脂肪酸にはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸があり、その他は不飽和脂肪酸だと覚えておけば十分です。(学生時代の飽和脂肪酸の覚え方は、秘密のアッコちゃんの「ラミパス」というゴロでした。古い・・)

飽和脂肪酸は化粧品分野では、主に「石けん」の原料として使用されています。石けんは脂肪酸を水酸化Naや水酸化Kといった強アルカリと中和して作られます(中和法)。石鹸は酸化されにくく、ニキビを悪化させたリ、皮膚の炎症を促進することはありません。

化粧品にリノール酸やリノレン酸といった不飽和脂肪酸が使われている場合は、酸化されやすくニキビの原因になることがあります。不飽和脂肪酸が含まれた化粧品の場合、だいたい酸化防止剤としてトコフェロール(ビタミンE)などが添加されるものの、ニキビが出来やすい体質の方にはお勧めしません。

脂肪酸の多くはグリセロール(グリセリンと同義です)とエステル結合して、トリグリセライド(グリセリン1分子に対して脂肪酸が3つ結合)、ジグリセライド(脂肪酸が2つ結合)、モノグリセライド(脂肪酸が1つ結合)として存在していたり、リン酸とエステル結合してリン脂質として存在しています。

遊離脂肪酸と脂肪酸の違いは、他の物質と「エステル結合」しているかどうかで、エステル結合していない脂肪酸のことを遊離脂肪酸と呼びます。単に脂肪酸と言う場合は、遊離脂肪酸を指していると考えて差し支えありません。

オリーブオイルはニキビに効果がある?悪化させる?

オリーブオイルは「油脂」になります。油脂(トリグリセライド)はアクネ菌のエサになるので、ニキビの原因になり得ます。ツバキ油なども同様です。

ただし、油脂を構成している脂肪酸の種類によっても酸化されやすい、されにくいという違いがあり、油脂自体はニキビの原因にはなり得ますが、構成している脂肪酸の種類によってその度合いは異なります。

例えば、オリーブオイルはオレイン酸が70%以上含まれています。オレイン酸は不飽和脂肪酸の中ではもっとも酸化されにくい一価の不飽和脂肪酸ですので、オリーブオイル自体がアクネ菌のエサにはなるものの、その後に分解されて生じるオレイン酸自体はニキビの原因にはなりにくいと言えます。

オリーブオイル、ツバキ油、マカダミアナッツ油などが酸化に強いと言われるのは、酸化されにくいオレイン酸を多く含んでいるからです。ただし、オレイン酸は不飽和脂肪酸ですから、飽和脂肪酸と比較すると酸化されやすく、それがニキビの原因になることがあります。

また、いくら酸化されにくい油脂といっても、ワセリンなどの炭化水素や、ホホバオイルなどのロウと比較すると酸化されやすいため、酸化しやすいか、酸化し難いかは、何を比較対象にするかによって表現が180度異なります。

余談ですが、数年前に資生堂の研究で、オレイン酸自体が毛穴周囲の角化異常を引き起こし、毛穴を目立たせる原因になると報告されました。ためしてガッテンでも、オレイン酸と毛穴との関係が放送されていたので、覚えている人もいると思います。

オレイン酸を多く含むオリーブオイルは、グリセロール(グリセリンのことです)と結合しているので、オレイン酸を増やす原因にはならないと書いているホームページもあります。しかし油脂ですので、肌の常在菌の働きでオレイン酸とグリセリンに分解されますから、皮膚上のオレイン酸は増加すると考えられます。なので、もしテレビで言うように、もしも、オレイン酸が毛穴の開きを悪化させる、もしくは、毛穴が目立つ原因になるのだとすれば、オレイン酸をたっぷりと含んでいるオリーブオイルは「毛穴に悪い。」ということになります。

ただし、オレイン酸が本当に毛穴を目立たせてしまうのかは、異論の余地があり、オレイン酸単独の問題なのか、他の脂肪酸との複雑な組み合わせや比率による問題なのか、そもそも本当にオレイン酸で毛穴が目立つのかなど、様々な意見があります。

総じて、ニキビが出来やすい方には、オリーブオイルやツバキ油などの油脂は積極的にはお勧めしませんが、もちろんこれも程度問題ではあります。油脂が多少配合されているくらいでは、ニキビができやすい化粧品とは言えません。

ホホバオイルはニキビに効果がある?悪化させる?

ホホバオイルは、オリーブオイルなどと同じ油脂だと思ってる人も多いのですが、化学構造上は「ロウ」に分類されます。

ロウは高級脂肪酸+高級アルコールで出来ていますが、油脂と異なりアクネ菌のエサになりません。アクネ菌に分解されて遊離脂肪酸を生じることがないため、遊離脂肪酸の酸化による炎症も引き起こしません。ワセリンなどの炭化水素と同様に、皮膚の常在菌叢には影響がないと考えられています。

そのため、ホホバオイルやミツロウなどのロウは、ニキビを悪化させる原因にはなりにくいのですが、ワセリンと同様に被膜として働くため、多く付け過ぎれば毛穴づまりの原因になり、嫌気性菌のアクネ菌を増殖さえてしまう可能性があります。

多すぎると他の油性成分同様に、ニキビの原因になる可能性も否定できませんが、総じて、ホホバオイルはニキビを悪化させない油性成分と言えます。

ちなみに、ホホバ油に組成が近く、代替として配合できるロウにオレンジラフィー油があります。オレンジラフィー油の「オレンジ」は果物のオレンジではなく、オレンジラフィというヒウチダイ科の深海魚から作られたオイルです。精油や油脂と間違えられますが、ロウ(ワックス)に分類されます。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]