肌のクリニック院長の肌ブログ

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化粧水の処方と成分を読み解く(1)

time 2016/11/19

化粧水の処方設計

化粧水の処方はすべての化粧品の基本です。化粧水は、水溶性の材料を組み合わせていけば、誰でも簡単に作ることができます。精製水とグリセリンだけのシンプルな保湿化粧水や、そこに尿素を混ぜて「美肌水」を作ったことがある方もいると思います。

ここでは市販の化粧水の成分から、処方設計やその意図などを読み解きます。

化粧水には「化粧品の水溶性成分・保湿成分あれこれ」で書いた成分が沢山配合されていますので、そちらのページを見ながらお読みください。

化粧水 処方例1

まず、化粧品の全成分表示のルールですが、以下の2つを覚えておいてください。

① 多く配合している成分から順に書かれている

② 1%以下の配合量の成分に関しては順不同

そこで、某有名ブランドの化粧水の成分を見ていきます。

全成分:水、BG、グリセリン、エタノール、PCA-Na、アセチルヒアルロン酸Na、カミツレエキス、チャエキス、水溶性コラーゲン、EDTA-2Na、イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油、クエン酸、クエン酸Na、乳酸Na、イソブチルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、プロピルパラベン、メチルパラベン、香料

一つずつ成分を並べていきます。

成分表示 成分の分類
①水
②BG 水溶性保湿剤
③グリセリン 水溶性保湿剤
④エタノール  アルコール
⑤PCA-Na 水溶性保湿剤
⑥アセチルヒアルロン酸Na 水溶性保湿剤
⑦カミツレエキス 植物エキス 
⑧チャエキス 植物エキス 
⑨水溶性コラーゲン  水溶性保湿剤
⑩EDTA-2Na キレート剤 
⑪イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油 非イオン系界面活性剤 
⑫クエン酸 PH調整剤 
⑬クエン酸Na  PH調整剤 
⑭乳酸Na 水溶性保湿剤
⑮イソブチルパラベン  防腐剤
⑯エチルパラベン  防腐剤
⑰ブチルパラベン   防腐剤
⑱プロピルパラベン  防腐剤
⑲メチルパラベン  防腐剤
⑳香料  香料

成分の分類を見ると、大まかには、「水溶性の保湿剤」と「防腐剤」という構成になっています。上から一つずつ見ていきます。

①水・・・ほとんどの化粧水には水が最も多く含まれています。

②BG・・・よく使われる保湿成分です(保湿成分あれこれ参照)。BGは上のほうに表示されていると、保湿剤として配合されていて、下のほうに表示されていると、植物エキスの抽出溶媒として配合されています。この化粧水は、水の次にBGが多いので、保湿剤用途で配合されていますが、⑦,⑧の植物エキスの抽出溶媒としても配合されています。

③グリセリン・・・最も基本の保湿成分です(保湿成分あれこれ参照)。

④エタノール・・・BGと同様に植物エキスの抽出溶媒としても使われます。⑦、⑧の植物エキスの抽出溶媒としてはBGが使われている可能性が高いため(植物エキス原料を調べると、何の溶媒で抽出しているか判断できます)、今回の化粧水では、エタノールは他の用途で配合されていると推察されます。

一般には、エタノールを配合するとその揮発性の高さから、化粧水を塗った後に「スッとした」使い心地になり、肌のベタつきを抑えてさっぱりとした化粧水になります。ただし、エタノール(アレルギー)アレルギーの方もいるため、敏感肌や乾燥肌の方には適しません。

⑤PCA-Na・・・肌の天然保湿因子NMFの12%を占める保湿成分です(保湿成分あれこれ参照)。もともとが肌の角質内にある保湿成分のため、化粧水には非常によく使われる保湿成分です。

⑥アセチルヒアルロン酸Na・・・ヒアルロン酸の水酸基をアセチル基で置換(アセチル化)したものです。水溶性保湿剤ですが、ヒアルロン酸をアセチル化することで脂溶性(油溶性)の性質も併せもつようになり、肌表面との親和性が向上します。脂溶性を持っているからと言っても、巨大分子なので角層内部へは浸透しません。

ヒアルロン酸の化粧水への配合濃度は0.01%~0.1%程度が多く、⑥以下の成分は1%以下の配合量です。そのため、⑥以下の成分表は順不同で表示されています。

⑦カミツレエキス・・・カミツレから抽出した植物エキス。別名カモミール。保湿、消炎、収斂作用などがあるとされています。

⑧チャエキス・・・茶葉から抽出した植物エキス。

⑨水溶性コラーゲン・・・水溶性のコラーゲン(保湿成分あれこれ参照)。

⑩EDTA-2Na(エデト酸塩)・・・キレート剤です。キレートとは、ラテン語で「カニのハサミ」を意味します。簡単に説明すると、カニのハサミのように金属イオンを挟み、キャッチして逃がさないようにする成分です。水の中には、マグネシウムイオンやカルシウムイオンなどの金属イオンが微量含まれており、その金属イオンが他の成分と結合すると、水に溶けにくくなって、化粧水に「もや」が生じたり「沈殿」が生じたりします。キレート剤を入れることで、金属イオンがキレート剤と結合して、他の成分と結合しなくなり、すっきりとした透明な化粧水ができあがります。

EDTAは旧表示指定成分であり、アレルギー等の原因になりますから、必要がなければ使わないほうが良い成分ではあります。EDTAを使っていない化粧品(化粧水や石鹸)には、必ず「軟水」が使われています。軟水は逆浸透膜(RO)純水装置やイオン交換樹脂によって、水道水中の金属イオンを取り除いて作られます。

硬度ゼロで、金属イオンを全く含まない軟水を使用すれば、キレート剤は不要になります。しかし、実際にはすべての工場で軟水を使用しているわけではないため、少なからず金属イオンが混ざってしまいます(例えば、カミツレエキスなどの植物エキスは、原料として水・BGを含みますから、その原料を作っている工場が軟水を使用していなければ、キレート剤は必要ということになります)。結果、EDTAは品質保持のために多くの化粧品に配合されています。

ちなみに家で手作りで化粧水を作っている方で、このEDTAを配合している人はまずいないでしょう。手作りの場合精製水を使うことが多く、精製水は「軟水」になります。また、例え水道水や浄水(浄水では硬度は変わりません)で作ったとしても、短期で使い切りのため、化粧水の透明度を気にする人は多くないことから、やはり不要です。

⑪イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油・・・非イオン(ノニオン)系界面活性剤。界面活性剤は水と油を混合させるために使用します。水溶性の成分だけ使用する化粧水になぜ界面活性剤が必要なのか不思議に思うかもしれませんが、界面活性剤が使われている場合、化粧水中に「油溶性の成分」が混ざっていることを意味しています。

この化粧水では、⑮~⑲のパラベン類と、⑳の香料が油溶性の成分です。

パラベンやフェノキシエタノールは防腐剤ですが、油溶性でほとんど水に溶けませんので、必ず界面活性剤もセットで使われます。香料は精油など油性成分のことがほとんどなので、化粧水には混ざりませんから、界面活性剤が必要です。

その他には酸化防止剤のトコフェロール(ビタミンE)を混ぜるのにも使われます。ビタミンEは油溶性ビタミンです。

時々、油性成分を配合していない化粧水に界面活性剤が使われていることがありますが、これは単に皮脂と化粧水を馴染みやすくし、使い心地を良くするためです。多少肌のバリアは壊れるかもしれませんが、ごく少量の非イオン系の界面活性剤で、化粧水の角層への浸透率が大幅に上がることはありません。

化粧水に使われる界面活性剤は、刺激の少ない非イオン系(ノニオン系)のものが用いられます。イソステアリン酸PEG-50水添ヒマシ油の他に、PEG-60水添ヒマシ油、ポリソルベート20などもよく使われる界面活性剤です。

ちなみにPEGの後の数字は、大きくなれば水となじみやすく、小さくなれば油となじみやすい界面活性剤になります。逆に、ポリソルベートの後の数字は、小さくなれば水と馴染みやすく、大きくなれば油となじみやすくなります。そのため、化粧水にはPEG-10水添ヒマシ油やポリソルベート80ではなく、PEG-60水添ヒマシ油やポリソルベート20が使われることが多いというわけです。

界面活性剤については「化粧品の界面活性剤あれこれ」をご参照ください。

安全性が高い界面活性剤を使っていると言っても、化粧水に本当に必要な成分なのでしょうか?化粧水中の界面活性剤は、主に香料や酸化防止剤を混合するためのものですから、香料も酸化防止剤もいらないのであれば、配合する意味はありませんし、むしろ配合しない方が良い成分と言えるでしょう。

市販の化粧水は3年以上という長い期間、腐敗や酸化を防止しなければなりません。しかし、手作り化粧水の場合は、酸化防止剤は必要なく、さらに、1週間程度で使い切るのであれば、防腐剤すら必要ありません。不要な成分を入れなくて済むところが、手作りの良い面だと言えます。

⑫クエン酸 ⑬クエン酸Na・・・PH調整のために使用されます。配合濃度は0.1%以下と微量です。クエン酸はEDTAほどではありませんが、弱いキレート作用も持っています。

クエン酸は酸性、クエン酸Naはクエン酸を炭酸ナトリウムで中和したものでアルカリ性です。なぜ酸性のクエン酸と、アルカリ性のクエン酸Naを両方使うかと言うと、「緩衝液」を作るためです。

PH調整を行っていない化粧水は、大気中の二酸化炭素などの外的要因や、成分などの内的要因によって容易にPHが変動してしまいます。緩衝液を作ると、少量の酸や塩基を加えたり、多少濃度が変化したりしても pH が一定に保たれるようになります。

⑭乳酸Na・・・肌の天然保湿因子NMFの11%を占める保湿成分です(保湿成分あれこれ参照)。PH調整剤として使用されることもあります。

⑮~⑲パラベン・・・防腐剤です。パラベンやフェノキシエタノールなどの防腐剤は、市販の化粧品にはほぼ100%入っており、防腐剤フリーと謳われている化粧品にも、パラベンやフェノキシエタノールの代替成分が必ず入っています。それは、3年以上という長期間成分の劣化をなくし、防腐を維持しなければならないからです。

パラベンが複数種類配合されているのは、防腐剤が多いと思ってしまいますが、実際には複数種類組み合わせることで防腐効果を上げることが可能なため、トータルで見ると防腐剤総量を減らすことができます。

微量では安全性は高いものの、できれば使いたくない成分です。手作り化粧水の場合は、短期使い切りのため、防腐剤を入れなくて済むことが最大のメリットでもあります。

パラベンについて詳しくは、「化粧品の防腐剤あれこれ」を参照してください。

⑳香料・・・天然香料は、主に植物から抽出された精油が使われています。動物性香料は、オスのジャコウジカから取った「ムスク」などが使われていましたが、現在は動物保護の観点から使われなくなりました。合成香料は、化学合成によって天然香料に似た匂いを持つ香料です。調合香料は、天然香料と合成香料をブレンドしたものを言います。

単に香料と表示されているものもあれば、「ラベンダー油」「ゼラニウム油」など、原料の精油が表示されているものもあります。

香料には油性成分が多く、化粧水へ配合するとそのままでは混ざらないため、⑪のような合成界面活性剤が併せて使われます。香水には香料が15%~30%も配合されていますが、化粧水には通常0.1%以下の配合量ですので、ごく微量です。

成分を読み解く練習

以上が、一般的な市販化粧水の成分の読み解き方です。「この成分はこの分類」というだけでなく、どうしてこの成分が使われているのか、どのようなメリットデメリットがあるのか、ということも重要です。今回取り上げた化粧水は、基本的な化粧水の処方設計ですので、これが読めれば、どんどん他の製品も読めるようになります。

特に化粧水や美容液は、水溶性成分がメインのシンプルなものが多いです。成分は無数にありますが、最近の化粧水は、どこのブランドの処方設計も似通っており、使われる原料が限られています。2~3ヶ月程度練習をすれば、ほとんどの成分を読めるようになりますので、ぜひチャレンジしてみてください。

成分を読む練習をすることによって、自分に合った化粧品を選ぶことができるようになります。

最近では一般の方向けに、化粧品原料が市販されています。特別な器材が必要ない化粧水は、最も手作りに適しています。手作りすることで、市販の化粧水のデメリットを無くすことができるため、ぜひ手作り化粧水にもチャレンジしてみてください。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]