2018/08/31
ニキビ跡のでき方から、各種治療の効果を記載してきましたが、今回は、レーザーの中でも、凹みに効果があるものとないものがあることについて、詳しく記述していきます。
レーザーの種類
レーザー治療全盛時代の今は、ニキビ跡の治療にレーザーは欠かせないものとなっています。しかし、レーザーで使用されている波長や種類、機種によって効果は大きく異なり、凹みを改善させる効果がある機種はそう多くありません。
美容領域で使われているレーザー
主に美容クリニックで使用されているレーザー一覧です。
レーザーの種類 | 代表的な機種名 | 治療目的 |
---|---|---|
ルビーレーザー(Qスイッチ) 694nm | ザ・ルビーZ1 ザ・ルビーNanoQ MODEL IB101 | シミ |
アレキサンドライトレーザー(ピコ) 755nm | ピコシュア | シミ・肝斑 イレズミ ニキビ跡 若返り |
アレキサンドライトレーザー(Qスイッチ) 755nm | アレックストライバンテージ アコレード | シミ・肝斑 |
アレキサンドライトレーザー(ロング) 755nm | クラリティ ジェントルレーズ ジェントルマックスプロ エリート | 脱毛 |
ネオジウムヤグレーザー(ピコ) ピコヤグ 1064nm・532nm | エンライトン ピコウェイ ディスカバリーピコ | シミ・肝斑 イレズミ 若返り |
ネオジウムヤグレーザー(ナノ) Qスイッチヤグ 1064nm・532nm | メドライトC6 フォトナQX マイキューデュアル スペクトラ トライビームプレミアム レブライト | シミ・肝斑 イレズミ 若返り |
ネオジウムヤグレーザー(ロング) ロングパルスヤグ 1064nm | スペクトラ トライビームプレミアム シナジー エクセルV ジェネシス クラリティ ジェントルマックスプロ エリート | 血管腫 毛細血管拡張症 脱毛 若返り |
ネオジウムヤグレーザー 1320nm | クールタッチ アファームマルチコンプレックス(+1440nm) | ニキビ跡 若返り |
エルビウムグラスレーザー 1540nm | スターラックス モザイク | ニキビ跡 若返り |
エルビウムグラスファイバーレーザー 1550nm | フラクセル フラクセル2 | ニキビ跡 若返り |
ツリウムグラスファイバーレーザー 1927nm | フラクセル3 | ニキビ跡 若返り |
YSGGレーザー 2790nm | パールフラクショナル | ニキビ跡・瘢痕 若返り |
エルビウムヤグレーザー 2940nm | ピクセル2940 サイトンプロフラクショナル ヘイロー | ほくろ・イボ ニキビ跡・瘢痕 若返り |
CO2レーザー 10600nm | エコツーエボリューション マドンナリフト フラクセルリペア コア アンコア(ブリッジセラピー) | ほくろ・イボ ニキビ跡・瘢痕 若返り |
ダイレーザー 585nm~595nm | Vビーム VビームⅡ Vビームパーフェクタ シナジー | 血管腫 毛細血管拡張症 |
ダイオードレーザー 800nm 810nm 940nm | ライトシェアデュエット ベクタス メディオスターNeXT ソプラノ | 脱毛 |
上記はパルス幅と波長で大まかに分類しています。実際には複数の波長が出る機種もありますし、同じ波長のレーザーでも、機種によってパルス幅や照射径が異なり、特徴が異なります。パルス幅はナノ秒を「Qスイッチ」、ピコ秒を「ピコ」、それ以上はマイクロ秒でもミリ秒でも「ロング」と分類しています。
治療目的の項目を見てもらうと、ニキビ跡、特に瘢痕(凹み)の用途のレーザーは限られています。
ニキビ跡の凹みに適応があるレーザー
ニキビ跡と言っても赤い色素沈着やシミ、凹み、肥厚性瘢痕やケロイドなどいろいろな病態がありますが、ここではニキビ跡の凹みについてのみ述べます。
ピコレーザーはニキビ跡に効くの?
アレキサンドライトピコレーザーのピコシュアは、フラクショナル照射(点状照射)ができるため、表皮に負担をかけずに、真皮に熱を加えてコラーゲン産生を促すことから、ニキビ跡にも適応があるとされています。
しかし、以前の記事「ニキビ跡の凹凸・クレーターの形成」や、「光治療(IPL)は凹凸に効果なし」を読んだ方はわかると思いますが、真皮のコラーゲンの産生を促すだけではニキビ跡の凹みは持ち上がりません。
アレキサンドライトレーザーの波長は755nmですから、真皮の奥深くまでは届きませんし、アブレーティブレーザー(組織を蒸散・破壊するタイプのレーザー)ではないので、ニキビ跡の瘢痕組織を壊すことはできません。IPLと同じで、コラーゲン産生による肌のハリで、ニキビ跡が多少目立たなくなる程度に考えておいたほうが良いでしょう。
困ったのは、ピコシュアの営業の方が「ピコフラクショナルはニキビ跡の凹凸を治します!」と宣伝してしまっていることです。原理からして、当然肥厚性瘢痕やケロイドには効果は望めませんし、ニキビ跡の凹みに対しても効果が得られないことは明らかです。
業者の宣伝文句をそのまま受け売りで「ニキビ跡の凹凸改善!」と書いている美容外科のHPも散見されます。これは、IPLが登場した時とよく似ており、IPLも最初はニキビ跡の凹凸改善とバンバン宣伝されていました。今は効果がないことがわかり、誇大に宣伝されることはなくなりましたが、ピコレーザーはまだ出始めであり、知識のない医師は凹みが治ると思っているようです。
ピコレーザーにはピコレーザーの良いところは沢山ありますが、ニキビ跡の凹みには期待できません。レーザーは適材適所というわけです。
フラクショナルレーザー
フラクショナルレーザーはドット状に照射するレーザーの総称です。上の表の中では、ネオジウムヤグレーザーのアファームマルチコンプレックスから、CO2レーザーのアンコアまでが、すべてフラクショナルレーザーに当たります。
フラクショナルレーザーには皮膚を蒸散させて破壊・除去するタイプのアブレーティブレーザーと、熱凝固で変性させるタイプ(蒸散、破壊がないタイプ)のノンアブレーティブレーザーに分かれます。アブレーティブレーザーはYSGGレーザー、エルビウムヤグレーザー、CO2レーザーの3つです。その他は、ノンアブレーティブレーザーに属します。
アブレーティブレーザーは、ノンアブレーティブレーザーに比べて、皮膚を蒸散させるのため侵襲的で、術後のダウンタイムが長くなります。一方、ニキビ跡の凹みの治療において、瘢痕組織を除去して再構築を促すという大切な働きをします。
ノンアブレーティブレーザーは、ダウンタイムは短いものの、瘢痕組織そのものを取り除く作用はありません。フラクセルが登場した際、まるで夢のようなレーザーの如く「ニキビ跡の凹凸も治せる!」「肌を入れ替えて赤ちゃん肌に!」などと、例によって盛んに宣伝されていましたが、実際には、期待されたほど凹みへの効果はありませんでした。フラクセルやアファームなどのノンアブレーティブレーザーは、ニキビ跡の凹みにはあまり効果的ではありません。
「フラクショナルレーザーのニキビ跡への効果」へもう少し続きます。