肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

ニキビ跡の凹み治療・肌のクリニックの考え方5

time 2017/05/24

前回の記事、「ニキビ跡の凹み治療・肌のクリニックの考え方4」からの続きです。

フラクショナルレーザーのニキビ跡への効果

前回の記事で、フラクセルやアファームなどのノンアブレーティブレーザーは、ニキビ跡の凹みには効果的ではないことを書きましたが、アブレーティブレーザーはどうなのでしょうか?

アブレーティブレーザーは組織を蒸散して除去するレーザーであり、深くまで照射すれば硬くなった瘢痕組織を除去して、新しい瘢痕組織を作るという作用が期待できます。

ここでもう一度ニキビ跡の凹みの原因を見ておきます。上の図のように炎症によってコラーゲン組織が欠損した状態で瘢痕組織が作られ、表皮が張った状態になっているのが凹みです。その他にも、筋膜と線維化組織で癒着して引っ張られている病態や、ニキビの炎症が皮下組織まで及び、脂肪組織が萎縮して皮下のボリュームが減り、凹んでしまう病態があります。

凹みの原因は、ニキビ跡の凹みの形状や皮膚伸展テストなどである程度判別はできるものの、実際は混在しているケースも多くあります。

アブレーティブフラクショナルレーザーを照射すると、上の図のように真皮の硬くなっている瘢痕組織を壊すことができます。硬く変性した瘢痕組織(悪い瘢痕組織)を除去して、コラーゲンの増生を起こし、元の瘢痕組織よりも真皮に近い瘢痕組織(良い瘢痕組織)へ置き換えることによって、ニキビ跡の凹みを改善します。

これは、ダーマローラーやダーマペンも同じですが、ニキビ跡の凹みを治すには、いかに「悪い瘢痕組織」を効率的に壊し、「良い瘢痕組織」に置き換えていくかが重要になります。

ニキビ跡の凹み治療・肌のクリニックの考え方1にも書いたように、真皮は一度壊れると、表皮と違って完全に元の真皮には戻りません。それは、鋭利なメスで切ったとしても、レーザーで壊したとしても、ニキビの炎症で壊れたとしても同じで、壊れた真皮は瘢痕組織に置き換わります。瘢痕組織がコラーゲンが欠損した状態で形成されたり、いびつな形で形成されたりすることで、凹凸が生じますので、それをもう一度壊して、新しい良い瘢痕組織(真皮に近い瘢痕組織)に置き換える必要があります。

アブレーティブタイプのフラクショナルレーザーは、瘢痕組織を破壊・除去することができるため、ニキビ跡の凹みを改善させる作用が期待できます。

フラクショナルレーザーで凹みの改善が乏しい理由

アブレーティブタイプのフラクショナルレーザーでもまったく改善しない例や改善が乏しい例は沢山あります。それは以下の理由によります。

まず、先ほどの図のように、フラクショナルレーザーは点状に照射されます。一度に壊せる瘢痕組織は、せいぜい全体の10%~20%程度です。残りの硬い瘢痕組織は残った状態ですから、一度で劇的に改善させることは難しく、ある程度効果を実感するまでに3~4回ほどはかかります。

点状に照射せずに、肌を削り取るように照射することもできますが、そうすると瘢痕組織を広範に除去できる反面、肌を削ぐ形になりますから、ダウンタイムが6ヶ月~年単位となり、あまり現実的な治療とは言えません。点状に照射するフラクショナルレーザーは、ダウンタイムが2週間程度と短い反面、効果が限定的になることは念頭に置く必要があります。

2つ目は、表皮と筋膜が線維化組織で癒着して引っ張られている場合は、垂直方向に線維が走っているので、垂直方向にビームが照射されるフラクショナルレーザーでは効率良く切断できません。こういった場合、後述するサブシジョンの方が効率的に繊維を切断できます。

3つ目は、脂肪組織が委縮しているタイプの凹みです。皮下組織の脂肪が委縮してしまっている場合は、ボリュームが足りていない状態ですから、レーザーを当ててある程度真皮のコラーゲンの増生が促されても、足りていない脂肪組織を補うほどのボリュームを出すことは難しく、効果は限定されます。ヒアルロン酸や脂肪自体を注入する方法や、bFGFやBellafillを注入する方法などがありますが、注入剤によってメリット・デメリットがあります。(それぞれの注入剤の特徴については、ここでは割愛します。)

4つ目に、レーザーで悪い瘢痕組織を壊したものの、良い瘢痕組織に置き換わらない場合です。悪い瘢痕組織を壊した後も、コラーゲンの増生が起こらず、再びコラーゲンが欠損した状態で瘢痕組織になってしまったり、レーザー後に悪い瘢痕組織が逆に増えてしまったりということがあります。レーザー後の組織の再生を高める湿潤療法(ハイドロコロイドテープなど)を併用すること、連続して打たずに十分に期間を空けること、肌が薄い人など適応がない人にレーザーを行わないことなどで、こういった事態を防ぐことが可能です。

最後に、患者の期待値が高すぎることが挙げられます。実際にはフラクショナルレーザーで改善しているものの、自分が期待していたより改善しなかったというケースです。これは、医師が効果が限定されることをきちんと説明していないことや、HPで「赤ちゃん肌に生まれ変わる!」などと誇大広告をして、期待を煽ってしまっていることも原因の一つです。ニキビ跡の凹凸は一度出来れば、完全に元の状態に戻すことは不可能です。いかに目立たなくするかということが治療目標になりますから、希望を持つことは良いのですが、あまり過度に期待し過ぎてはいけません。

ニキビ跡にはどのフラクショナルレーザーが良い?

アブレーティブフラクショナルレーザーはYSGGレーザー、エルビウムヤグレーザー、CO2レーザーの3つですが、私個人の意見としては、ニキビ跡の凹みにはCO2フラクショナルレーザーが最も適していると考えます。

エルビウムヤグレーザーは、CO2レーザーと比較して水への吸収性が10倍と高く、当てた組織の水分に限局的に反応して組織を蒸散させ、周辺の組織への熱損傷(凝固)が少ないことが利点とされています。周囲への熱損傷が少ないので、CO2レーザーと比較して早く傷が治り、ダウンタイムも短かくなり、レーザー後の色素沈着などの合併症も少なくなるとされています。

しかし、エルビウムヤグレーザーは、CO2のように鋭く切り取るというより、面を少しずつ削っていくタイプのレーザーです。照射部のごく表面の水分に吸収されるので、発熱が非常に小さく済む反面、表皮への吸収が最も大きくなり、深達度はCO2に比較して浅くなります。

CO2レーザーは、深達度が深く、周辺組織への熱損傷(凝固)を生じますが、ある程度の熱損傷はコラーゲンの増生を促しますので、悪い面だけではありません。熱損傷の大きい順では、CO2レーザー>YSGGレーザー>エルビウムヤグレーザーとなり、ダウンタイムもこの順で長くなります。

また、同じCO2フラクショナルレーザーでも照射系や安定したエネルギーを出せるかどうか、照射密度の可変やプログラムによって、深達度や熱損傷の程度が異なるため、機種による効果の違いもあります。

いろいろと考えた結果、肌のクリニックでは、CO2フラクショナルレーザーのエコツーエボリューションを導入していますが、上記のようにそれぞれのレーザーに良い面、悪い面がありますので、基本的には医師の腕次第(レーザーの適応を誤らない判断も含めて)なのだと思います。

「ニキビ跡の凹み治療・肌のクリニックの考え方6」へもう少しだけ続きます(長い・・)。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]