「肌のクリニック」院長の肌ブログ

東京の高円寺と麹町にある皮膚科・美容皮膚科「肌のクリニック」の院長ブログです。ニキビやニキビ跡、シミ治療、化粧品、プラセンタなどの美容情報を医師の視点から発信しています。化粧品業界や美容業界の問題点にもメスを入れていきます。

サブシジョンのニキビ跡への効果

time 2017/06/17

ニキビ跡のでき方から始まり、化粧品や光治療ダーマペンとラジオ波各種レーザーの特性フラクショナルレーザーと、長々と書いてきましたが、今回のサブシジョンについての記事で、一旦一区切りとします。

サブシジョン

ニキビ跡の凹みの中には、図のように、線維化組織で表皮が筋膜と癒着して、引っ張られているような状態になり、凹んでしまうものがあります。このようなニキビ跡をローリング型と分類していますが、船の錨(イカリ)のように底に引っ張られていることから、海外ではtethered acne scars(テザードアクネスカー)や anchored acne scars(アンカードアクネスカー)と呼ばれています。

辺縁がなだらかなことや、顔の筋肉を動かしてもらい、それに引っ張られるように凹みが深くなることで、凹み部分と筋膜が癒着しているかどうかを判断します。 このようなニキビ跡では、まず凹み部分の表皮と筋膜との癒着を剥がさなければなりません。

癒着を剥がす

サブシジョンは、医療用の16G~27G針や、BD NoKor(Becton Dickinson社製)という先端がやや広がっている針を皮下に挿入し、線維化組織を切断し、癒着を剥離する手法です。

下図のように、フラクショナルレーザーやダーマペンの場合、垂直方向へレーザービームや針が動くため、縦方向に走っている繊維を効率的に切断できません。

サブシジョンであれば、下図のように横方向に針を動かせるため、効率的に切断することが可能です。皮下で前後に動かしたり(トンネリングテクニック)、扇状に針を動かしたりして(ワイプテクニック)線維組織を切断するとともに、癒着を剥がし、その後ヒアルロン酸などの充填剤を注入して盛り上げます。

サブシジョン後の充填剤

癒着を切断した後、自然に盛り上がってくれればよいのですが、そのままにしておくと、大抵また癒着してしまいます。それは針で行うサブシジョンでも、スムースライナー(RFで切断するサブシジョン)でも、イノジェクター(ジェット噴流で切断するサブシジョン)でも同様です。

通常は、癒着を切断した後、硬めの架橋されたヒアルロン酸を注入して盛り上げます。 ヒアルロン酸は時間の経過とともに吸収されてしまいますが、繰り返し行うことにより、自己のコラーゲンの産生も促され、凹みが目立たなくなっていきます。

当院では行っていませんが、Bellafill(Suneva Medical社製)という注入剤も海外では良く使用されます。ベラフィルは、コラーゲンとポリメチルメタクリレート/PMMAからできており、注入するとPMMAがコラーゲンの産生を刺激して、周囲にコラーゲンが生成されます。ただし、非吸収性なので効果が半永久的な反面、やり直しがききません。

成長因子のbFGFは肉芽組織の形成を強力に促進するため、瘢痕組織を丁寧に壊した後であれば皮膚をしっかりと盛り上がらせることができ、効果も持続します。しかし、逆に盛り上がり過ぎてしまったり、凹みのある瘢痕組織部分は盛り上がらず、周囲の皮膚に薬液が作用して、周囲だけが盛り上がってしまったりといった副作用が出ることがあります。

一度自己の組織が増殖してしまうと、やり直しがききませんので、十分リスクなども考慮の上行う必要があります。

サブシジョンの効果と適応

サブシジョンの効果は、1度でしっかりとした効果が期待できますが、ボックス型やアイスピック型の凹みには適応がありません。サブシジョンが効果的なニキビ跡かどうか、慎重に適応を判断する必要があります。

一度の治療だけで満足行く患者さんもいますが、最初から100%治そうとすると、逆に盛り上がり過ぎてしまったり、不自然になります。そのため、当院では、1回の治療で30%程度凹みが改善すればよく、手術後にまだ気になる場合、1ヶ月以上の間隔を空けて、数回繰り返し行う必要があることを説明しています。

ローリング型以外の、ニキビ跡の凹み治療については、肌のクリニックのHP「凹凸・クレーターの治療」をご覧ください。

一度出来てしまった凹みを完全に戻すことはできない

ニキビ跡の凹みのでき方が分かると、何が効果的な治療なのか、何が効果がない治療なのかのおおよその判断はつくようになりますので、当ブログで勉強し、ぜひ無駄な治療を受けないようにしてください。

記事の中で取り上げた治療以外にも、瘢痕組織そのものをパンチングの器具でくり抜き、ピンセットで上に持ち上げて固定する「くり抜き挙上法」や、生理食塩水を圧縮空気でジェット噴流にして皮下に注入することで、真皮の引きつれや癒着を剥離する「イノジェクター」など、様々な治療が考案されていますが、効果のある治療を選んだとしても、凹みを完全に元の平らな状態に戻すことはできないということは念頭に置かなければなりません。

真皮にできた傷は、どんな傷でも元通りの真皮にはならず、瘢痕組織に置き換わります。真皮と瘢痕組織は、似て非なるものです。一度出来てしまったいびつな瘢痕組織(悪い瘢痕組織)を、いかに真皮に近い形の良い瘢痕組織に置き換えることができるかが、治療において大切なことではありますが、どんな治療でも、効果は限定的であることは覚悟しておく必要があります。

ニキビ跡の凹みを残さないために大切なこと

重症ニキビの方は、皮膚科に通院中の方も多いと思いますが、もし数ヶ月で治らなければ、ダラダラと治療をし続けないでください。日本のニキビ治療は、欧米から40年以上遅れています。

凹みを残さないために最も大切なことは、ニキビの「早期治療」をすることです。

重症であればあるほど、一生涯残るニキビ跡が出来てしまうリスクは高くなります。何年も漢方や抗生剤が漫然と出されていて、治らないまま放っておかれる方は、当院を早めに受診してください。

日本の保険治療の問題点と欧米のニキビ治療との違いについては、「肌のクリニックのニキビ治療」のページをご覧ください。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の内科・皮膚科医師です。薬剤師で抗加齢医学会専門医の涌水医師にも記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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