肌のクリニック院長の肌ブログ

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1.飲む日焼け止めの効果は期待できない

time 2017/08/28

飲む日焼け止めは効果なし?

この季節になると、飲む日焼け止めを飲んでいる方が多くなります。飲む日焼け止めは、20年程前からsunscreen pillとしてアメリカで販売され、話題になりました。当初は1~2種類しか製品がなかったのですが、今や検索すると山ほど様々な商品が出てきます。広告ページを見てみると「飲む日焼け止めランキング1位!」「飲む日焼け止め人気第一位!」「飲む日差しケアランキング1位!」「飲む日焼け止め売上げ1位!」「飲む日焼け対策グランプリ1位!」など、一体1位がいつくあるんだと、呆れてしまうほど宣伝過多です。

ネガティブワード「飲む日焼け止め効果なし」で検索してみると、「効果なしと言っているひとは、飲む期間が悪いだけ!きちんと飲めば効果は実感できる!」、「飲む日焼け止めサプリメントの選び方に問題がある!しっかりと成分が配合されたこのサプリメントを選ぶべき!」などという戯けた文言が並びます。ネガティブワードで検索された際に、ポジティブな情報にすり変えたり、自社商品に誘導するお決まりの広告手法です(広告やアフェリでないページもあるとは思いますが、ほとんどのサイトは内容や書き方が似ています)。

飲む日焼け止めの実際の商品口コミを見ると、国内、海外問わず「全然効果がない。」「日焼けして真っ赤になってしまった。」「効かない。」などの意見が多数書かれています。結論から言うと、飲む日焼け止めの日焼け防止効果はほとんど期待できないのですが、このブログでは2回にわたって、飲む日焼け止めは効果があるのか、効果がないのか、あったとしてどれくらいの日焼け防止効果があるのかを検証していきます。

飲む日焼け止めの成分

飲む日焼け止めの有効成分は「フェーンブロック」と「ニュートロックスサン」の2つに大別されます。

フェーンブロック

フェーンブロックは成分の商品名です。Polypodium Leucotomosというシダ植物から抽出された成分で、成分名は、Polypodium Leucotomosの日本名がダイオウウラボシのため、「ダイオウウラボシ抽出エキス」と記載されています。Polypodium Leucotomosから抽出したエキスなので、その頭文字を取って「PLエキス」とも呼ばれます。

フェーンブロックが入った飲む日焼け止めは、ヘリオケアやシェードファクターなどが代表的なサプリメント商品です。

ニュートロックスサン

ニュートロックスサンは成分の商品名です。シトラスとローズマリーから抽出したエキスが成分であり、成分表記には「シトラス果汁・ローズマリー葉エキス末」と書いてあります。

ニュートロックスサンが入った飲む日焼け止めの商品は、検索すると山ほどあるので、具体的な商品名はここでは書きません。

飲む日焼け止めの効果

飲む日焼け止めの効果は、抗酸化作用(活性酸素除去やDNA損傷保護作用)、抗炎症作用など、様々な基礎医学的な研究報告がありますが、実際の日常生活で、一体どれくらいの日焼け防止効果があるのかが消費者が一番知りたいところではないでしょうか。

フェーンブロックとニュートロックスサンについての論文を、サマリーを含めると8~9編ほど読みましたが、今回はその中で、主にUV-Bに対する効果を推察できるものを紹介します。

フェーンブロックの効果

研究報告によると、ボランティア20名に対して、Polypodium Leucotomosから抽出したエキス(フェーンブロック)1000mgを毎日飲んだ場合、UV-BによるMED(24時間後に皮膚に紅斑を生じさせるのに必要な最小紫外線量)が、15日後に14.57%、29日後に20.37%増加し、統計学的に有意な増加を認めた。(※1)

これにより、フェーンブロックは太陽光による紅斑の減少や、紅斑に対する耐性を上げることができると報告しています。

※1.Sergio.S. 2014. The benefits of using a compound containing Polypodium leucotomos extract for reducing erythema and pigmentation resulting from ultraviolet radiation. Surg Cosmet Dermatol;6(4):344­8.

ちなみに、研究者の一人は、1997年にフェーンブロックの経口投与によってMED(24時間後に皮膚に紅斑を生じさせるのに必要な最小紫外線量)が2.8倍となったということで、SPFが3程度あると主張しています(※2)。こちらの論文は、サマリーしか読めず、フェーンブロックの経口投与量を確認できなかったため(おそらく1日7.5mg/kg)、今回詳しい内容は割愛しますが、上記の2014年のMED増加率と比較して、ずいぶん異なります。この理由は何なのか、良くわかりません。

※2.González.S. 1997. Topical or oral administration with an extract of Polypodium leucotomos prevents acute sunburn and psoralen-induced phototoxic reactions as well as depletion of Langerhans cells in human skin. Photodermatol Photoimmunol Photomed. Feb-Apr;13(1-2):50-60.

ニュートロックスサンの効果

研究報告によると、ボランティア10名に対してニュートロックスサン250mgを毎日飲んだ場合、MED(24時間後に皮膚に紅斑を生じさせるのに必要な最小紫外線量)が、57日後に34%、85日後に56%の増加を示しました。(※3)

原料会社公式HPでは、こちらの論文を引用して、「ニュートロックスサンにより、85日後に56%と紫外線に対する保護力が大幅に増加した。」「科学的に証明された結果」と大きく宣伝されています。これを見ると、飲む日焼け止めは効果なしとは言えず、逆に「56%も保護力がアップするなら、飲んでいるだけで半分以上も紫外線がカットできる」と、とてもすごい効果が得られると勘違いしてしまいそうです。

日本のサプリメント会社も、原料会社の情報をそのまま掲載しており「ニュートロックスサンを飲むと、紫外線予防効果は57日で34%、85日で56%の効果!」と宣伝している会社が多くあります。しかし、広告手法を見ていると、この34%や56%という数値は、広告をしている側も意味をよく理解していないか、もしくは、消費者にわかり辛いように書かれているように見えます(わかり易いように、丁寧な説明をしている会社は見つけられませんでした)。

「紫外線予防効果56%、紫外線保護効果56%」というのは、ものは言いようってやつで、これらの数値や、飲む日焼け止めの具体的な効果については、後述します。

※3.Pérez-Sánchez.A.  2014. Protective effects of citrus and rosemary extracts on UV-induced damage in skin cell model and human volunteers. Journal of Photochemistry and Photobiology B: Biology 136 (2014) 12–18

SPFとMEDについて

飲む日焼け止めの効果あり・効果なしを検証するのに、まず「SPF」と「MED」について理解する必要があります。SPFは塗る日焼け止めには必ず表記されている数値なので、聞いたことがある人も多いと思います。

SPFは、主な日焼けの原因で有害である「UV-B」を防ぐ指標です。

SPFの計測方法

塗る日焼け止めのSPFの計測方法は、次のようにして行います。人の背中6か所それぞれに、UV-Bを6段階の強さで照射します。20~24時間後に、その6ヶ所が赤くなっていないかどうかを見ます。赤くなっているところがあれば、その赤くなっている部分に当てた紫外線量の中で、最も小さい数値を「MED(最小紅斑量:赤みを起こすのに必要な最小の紫外線照射量)」として記録します。

まず、上記の図のように、日焼け止めを塗らない状態で、30~80の強さのUV-Bを照射して、24時間後に少しでも赤くなっている部分の最小の紫外線量を記録します。ここでは、紫外線量70以上で皮膚が赤くなっているため、MEDは70です。

次に、上記の図のように、日焼け止めを塗った状態で、700~3500の強さのUV-Bを照射し、同様に24時間後に少しでも赤くなっている部分の最小の紫外線量を記録します。ここでは、1400以上で赤くなっているため、MEDは1400です。

SPFは、日焼け止めを塗った部分のMED÷何も塗らなかった部分のMEDで計算されます。上記の例では、1400÷70=20となり、SPFは20です。

上記の数値は一例で、MEDは一人ひとりの肌の性質によって異なるため、実際には10名以上で行い、その平均値で算出されます。ちなみに、日本人の平均MEDは60~70kJ/㎡(0.06~0.07J/㎡)です。この数値が上がるほど、日焼けに強い肌質と言えます。

次の記事「2.SPFから見ると、飲む日焼け止めは効果はほぼない」では、飲む日焼け止めの効果は、塗る日焼け止めと比較してどうなのかなど、実際の日常生活において、飲む日焼け止めで十分に効果があるのか、ないのかを検証していきます。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]