肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

2.SPFから見ると、飲む日焼け止めの効果はほぼない

time 2017/09/01

飲む日焼け止めの実際の日焼け防止効果

前回の記事「1.飲む日焼け止めの効果は期待できない」からの続きです。SPFやMEDについての概念が理解できると、次に、「飲む日焼け止めのSPFはどれくらい?」という疑問が沸いてくるかと思います。

ここで、もう一度フェーンブロックとニュートロックスサンの研究報告を見てみます。

「フェーンブロック1000mgを毎日飲んだ場合、MEDが、15日後に14.57%、29日後に20.37%増加した。」

「ニュートロックスサン250mgを毎日飲んだ場合、MEDが、57日後に34%、85日後に56%に増加した。」

つまりこれってどれくらいの紫外線防止効果なのでしょうか。前回の記事で書いた、SPFとMEDの概念について理解できていると、おおよそどれくらいかがわかります。

塗る日焼け止めの場合、最初のMEDが70とすると、SPF2の日焼け止めを塗ると、MEDは140となり(140÷70=2)、塗った瞬間からMEDは70→140へと、100%増加します。SPF30の日焼け止めを塗ると、塗った瞬間からMEDは70→2100へ、2900%増加します。

それに対して、フェーンブロックは、1ヶ月毎日飲んで20%の増加、ニュートロックスサンは、2ヶ月間毎日飲んで、34%の増加、3ヶ月間毎日飲んで56%の増加です。

つまり、飲む日焼け止めの数値は、現行のSPFで測定すると、数ヶ月毎日飲んでもSPFは2にも満たないことになります。

「プラセボと比較してMEDは3ヶ月で56%上昇しているので、有意差があり、統計上は意味がある数値だ!」という主張は良く分かりますが、既存の塗る日焼け止めと比較すると、SPFがあまりに低く、日焼け止めとしての効果はほとんど期待できない数値です。

ちなみに論文では、ニュートロックスサンを飲み始めてから29日目までのMED増加率はほとんどなく(有意差なし)、1ヶ月飲んだくらいでは、日焼け止めとして意味がないことも示唆されています。そして、例え3ヶ月飲んだとしても、SPFは1.54ですので、紫外線防止効果はほぼなく、日焼け止めとして使うにはやはり無理があります。

短期間飲んでも効果が出ないため、「今日は海水浴に行くから、今日だけ飲む日焼け止めを1錠飲んで出かけよう。」という使い方は、まったく意味がないことになります。

飲む日焼け止めに警告

アメリカのFADはサプリメントの規制をしていないため、飲む日焼け止めの効果があるのか、ないのかの判断は消費者に任されています。そんな中、アメリカ皮膚科学会(AAD)が、飲む日焼け止めに警告をしています。以下に全文とその翻訳を載せておきます。

American Academy of Dermatology statement on oral supplements for sun protection

Recently, there has been discussion in the media about oral supplements that claim to provide protection from the sun. The American Academy of Dermatology (Academy) wants to alert consumers that these pills should not be used as a replacement for sunscreen or sun-protective clothing. There is currently no scientific evidence that oral supplements alone can provide an adequate level of protection from the sun’s damaging ultraviolet rays. 

Sunscreen is the only form of sun protection that is regulated by the U.S. Food & Drug Administration (FDA). Broad-spectrum sunscreen with a Sun Protection Factor (SPF) of at least 15 has been scientifically proven to prevent sunburn and reduce the risk of skin cancer and early skin aging caused by the sun. Regardless of whether you choose to take oral supplements, the Academy recommends you seek shade, wear sun-protective clothing and apply a broad-spectrum, water-resistant sunscreen with an SPF of 30 or higher.

※引用 : https://www.aad.org/media/news-releases/american-academy-of-dermatology-statement-on-oral-supplements-for-sun-protection

近年、日焼けから守ると謳うサプリメント(飲む日焼け止め)について、メディアで論議されています。アメリカ皮膚科学会は、「これらの飲む日焼け止めを、塗る日焼け止めや、日焼けから守る衣服の代わりとして使用しないよう」消費者に警告します。現在、飲む日焼け止め単独で、太陽の有害な紫外線から、肌を適切に守るという科学的根拠は存在しません。

FADによって規定されている唯一の日焼け対策用品の形態は「塗る日焼け止めのみ」です。SPFが少なくとも15以上で、広域スペクトラム(広い範囲の紫外線をカットする)の日焼け止めは、日焼けを防ぎ、皮膚癌のリスクや日光による皮膚老化を抑えることが科学的に証明されています。アメリカ皮膚科学会は、飲む日焼け止めを服用するか否かにかかわらず、日陰を探し、日光を防ぐ衣服を着て、SPF30かそれ以上の広域スペクトラム、かつ、ウォータープルーフ(耐水タイプ)の日焼け止めを使うことを推奨します。

飲む日焼け止めの虚偽広告

飲む日焼け止めには怪しい企業が多数参入しており(もちろんまともな企業もありますが)、「塗る日焼け止めは古い!」「UVクリームを超えた紫外線カット」などの表現は、明らかに誇大であり、一部は虚偽広告に当たります。

※下記はネットで見つけた飲む日焼け止めのウェブページの一例です。

前述した通り、飲む日焼け止めの効果は、日焼け止めとしての効果は期待できません。ましてや、塗る日焼け止めを超えたなんてことは絶対になく、そんなデータも科学的根拠も存在しません。原料会社も「塗る日焼け止めの代わりになるものではなく、あくまで補完するもの。」と明示しています。塗る日焼け止めの代用にはなりません。

にもかかわらず、「UVクリームを超えた。」などという広告は完全に嘘であり、「塗る日焼け止めは古い。」「飲むだけで全身日焼け止め。」「塗り直しも不要!」という記載は、塗る日焼け止めはもう必要なくて、飲む日焼け止めだけ飲んでいれば問題ないんだと、消費者が誤解してしまいます。

飲む日焼け止めサプリメントの口コミを見ると、「飲む日焼け止めの効果を判断するために、何も塗らずに外に出たら真っ赤になりました。効果なしです。」というような意見が散見されます。飲む日焼け止めの紫外線防止効果は十分にないにもかかわらず、健康食品会社の誇大広告によって、あたかも非常に効果的にように宣伝するためこのようなことが起こります。

日本でもいい加減この手の広告には、厳しい規制が入って良いと思います。

「飲む日焼け止めには、UV-Aに対する効果があるんだ!」という反論もありそうですが、今回はUV-Bについて記載しましたが、UV-Aについても、いくつかのパイロットスタディでMPD(最小光毒照射量)の増加の報告はあるものの、PA値で換算すると、PA+の効果も得られないはずです。二重盲検や既存の塗る日焼け止めとの比較試験などはなく、正確なPA値がどれくらいになるかわかっていません。

「直接、日焼けを防止する効果は低くても、間接的に、活性酸素を除去する抗酸化作用によって、紫外線によるDNA損傷から守るんだ!」という意見はあるのでしょうが、これは「日焼け止め」ではなく、抗酸化サプリメントの範疇です。抗酸化作用が認められている成分は、ビタミンCやビタミンE、βカロチン、リコピン、アスタキサンチン、ポリフェノール、フラボノイド、アントシアニン、ピクノジェノール、αリポ酸、コエンザイムQ10など沢山あり、これらの抗酸化サプリメントも、日焼けや日常で生じる活性酸素の除去、細胞をDNA損傷から守るという研究報告は沢山あります。

日焼け止めサプリメントとしてではなく、抗酸化サプリメントとして広告するのならわかりますが、日焼け止めを全面に出して広告するのは無理がありますし、消費者にも誤解を招くのではないかと考えます。

飲む日焼け止めのまとめ

1.「紫外線ダメージ56%カット」「紫外線を56%もカット!」は完全に嘘で誤解を招く表現。実際は3ヶ月飲んでMEDが56%上昇するだけであり、飲む日焼け止めは、名前こそ日焼け止めだが、実際の日焼け止め効果はほとんどないか、あってもかなり少ない。

2.飲む日焼け止めのSPF値は公表されていないが、現在のSPF測定のルールで判定すると、3ヶ月毎日飲んだとしてもSPFは1.56以下で、ほとんど期待できない。

3.飲む日焼け止めの紫外線防止効果は、長期間飲んだとしても限定的だが、短期間(数日飲んだだけ)だとほぼゼロ。

4.飲む日焼け止めは塗る日焼け止めの代用品にはならない。

5.日焼け止めとしては期待できないが、抗酸化作用はある。

私の見解

長々と書きましたが、私は飲む日焼け止めを完全に否定しているわけではなく、日焼け止めというには無理があるかなというところです。そして、多くの健康食品会社や広告業者が、嘘や誇大広告によって、消費者の誤解を招いていることに警笛を鳴らしています。

医師によっては推奨する方もいるようですが、これは研究報告の捉え方によります。少しでも効果があるのであれば、使った方が良いと考える医師はいるのでしょう。また、原料会社や健康食品会社からの情報を鵜呑みにして、良く検証もせずに推奨している医師もいるかもしれません。本当に推奨しているのか、単にビジネス(商売)で患者に勧めているだけなのかを良く見極めてください。

私が、自分の患者に推奨するかと聞かれれば、私は推奨しませんが、正しい日焼け対策ができていれば、日焼け止めサプリを飲んでも飲まなくても、どっちでも良いと考えています。

ただし、健康食品会社の誇大広告の影響で、「塗る日焼け止めを塗らずに、飲む日焼け止めだけを飲んでいれば大丈夫。」「塗る日焼け止めの塗り直しが手間だから、飲む日焼け止めを併用しよう。」と勘違いしている人がいれば、すぐにやめてください。

前述した通り、飲む日焼け止めの紫外線防止効果は、塗る日焼け止めと比較するとほとんど無いに等しいですし、代用にはなりません。また、飲む日焼け止めを併用したからといって、塗る日焼け止めの塗り直しをしなくて良いということにはなりません。汗で流れ落ちた日焼け止めの塗り直しは非常に大切です。例え、ウォータープルーフタイプの日焼け止めだったとしても。

紫外線防止には、衣服や帽子、日傘などの物理的防御に加え、SPF30以上の日焼け止めと、汗をかいた際のこまめな塗り直しが重要であり、そのうえで、飲む日焼け止めを使うということであれば、副作用等なければ、それは別に構わないと考えます。副作用は少ないようですが、胃腸障害などが報告されています。

飲む日焼け止めについては、海外でも懐疑的な意見が多数あり、塗る日焼け止めとの比較試験や、大規模な二重盲検試験が求められていますが、いまだに行われていません。日焼け止めを謳うからには、ぜひ行って頂きたいところです。

Post script.

飲む日焼け止めサプリメントは、虚偽広告や誇大広告や消費者をミスリーディングしているサイトが多すぎて、まともなサイトは埋もれてしまっています。

「〇〇 効果なし」「〇〇 嘘」などのネガティブワードで調べても、広告業者のサイトが上位に表示されて、必要な情報が出てきません。これは、沢山の広告サイトや肯定的なサイトを作ることで、検索しても批判的なサイトを表示させないようにする手法で、化粧品、健康食品の広告手法として常態化しています。

当サイトの記事が良いと思った方は、ご自分のサイト、ブログ、Twitterなどで、リンク付きでご紹介いただけると、検索した際に上位表示されるようになるので、ぜひお願いします。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]