肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

化粧品を使ったら顔が赤くなってしまった?

time 2017/09/21

化粧品のアレルギーテスト

化粧品を使っていて赤くなってしまったり、目が腫れてしまったり、目の下に湿疹ができてしまったりといった症状は、化粧品のアレルギーを疑わせる症状です。そのような方には、化粧品をパッチという絆創膏に塗って、それを二の腕や背中に48時間貼り付けて検査を行う「パッチテスト」を行います。

肌のクリニックでは院内で化粧品を調剤している関係で、患者さん向けに化粧品成分のアレルギー検査を行ってきました。アレルギー検査は、項目が多いと一人の患者さんに30分以上かかることもあり、診療が混んできたこともあって今年の5月末で終了となっていますが、アレルギー検査によって多くの知見を得ることができました。

化粧品自体のパッチテストを行っている皮膚科はありますが、例えば「BG」や「エチルパラベン」、「メトキシケイヒ酸エチルヘキシル」といった個々の成分のアレルギー検査を行っている施設はほとんどありません。当院には、化粧品の個々の原料が豊富にありますので、それらを使ってパッチテストを行い、どの成分が合わないのかをより詳しく調べていました。(前述した通り、残念ながら現在は行っていません。)

患者さんの中には、化粧品業界で働いている方も多く、当院のブログは業界の方にも読んでいただいているようなので、パッチテストで得られた知見を少し記述したいと思います。

※写真の無断転載を禁じます。

上記は、当院で行った化粧品パッチテストの一例です。(写真は患者さんの許可を取って載せています。)白い矢印の部分は陽性反応を示しています。

通常は、水や高純度ワセリンなどをコントロール(比較基準)として用います。通常の化粧品はそのまま、洗顔料や界面活性剤成分の場合は100分の1に薄め、BGやグリセリンなどの場合は数%になるように薄めて行います。

意外に少ないパラベンアレルギー

化粧品に必ず入っているのが防腐剤です。防腐剤フリーと謳われている商品でも、必ずその代替として抗菌作用のある成分が含まれています。

※化粧品の防腐剤の成分については、「化粧品の防腐剤あれこれ | 防腐剤無添加化粧品」のページをご参照ください。

化粧品の防腐剤として代表的なのは「パラベン」と「フェノキシエタノール」の2つです。現在、パラベンフリーを売りにしている化粧品が主流ですので、パラベンはアレルギーや刺激が起こりやすい成分であると思っている方も多いのですが、意外にもパッチテストではパラベンにアレルギー反応(陽性反応)が出る患者さんは少なく、また、フェノキシエタノールも同様に少ないという結果となりました。

意外に多いBGなどの多価アルコールのアレルギー

それに対して、「BG」、「プロピレングリコール」、「ペンチレングリコール」、「ヘキサンジオール」などの多価アルコールのほうが、パラベンやフェノキシエタノールと比較して、パッチテスト陽性率が高いという結果になりました。ちなみに、パラベンはメチル・エチル・プロピルの3種類の検査をしていました。

BG、プロピレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキサンジオール、カプリリルグリコールなどの多価アルコールは、皮膚刺激性が少なく、防腐効果もあり、保湿性もあり、溶剤としても使われることから、非常に多くの化粧品に配合されています。

マンダムがヘキサンジオールやカプリリルグリコールといった多価アルコール(アルカンジオール)の組み合わせで防腐効果を発揮できることや、パラベンよりも刺激性が低いというデータを発表してから、各社パラベンフリーの化粧品を多く出すようになりました。

しかし、上記の多価アルコールは刺激性は低いものの、アレルギーはパラベンよりも多いというのが当院のデータです。(カプリリルグリコールは当院ではテストを行っていませんが、それ以外の多価アルコールは全てテストしています。)

アトピー性皮膚炎の方は、BGにアレルギーを起こす率が高いことが報告されていますが、それはPGやペンチレングリコール、ヘキサンジオールも同様で、刺激性が少ないからアレルギー性が少ないということにはなりません。

刺激性とアレルギー性の違い

刺激性とアレルギー性は異なります。

刺激性の反応は、文字通り肌に刺激を感じることです。例えばビタミンCは、還元性があり、酸性のため、高濃度のものを肌に使うと、誰でもピリピリとした刺激を感じます。しかし、ビタミンCにはアレルギー性はありません。刺激性は、濃度に依存して高くなることと、皮膚の部位によって感じやすい部位、感じにくい部位があります(顔と体では、通常は体の皮膚の方が鈍感です)。刺激性がある成分は、誰にでも刺激を与えますが、これも個人によって耐性が違うため、感じ方が異なります。

アレルギー性の反応は、ある原因物質に対して抗体をもっている場合のみに起こる反応です。アレルギーを起こす原因物質を抗原といいます。一度の接触では起こらず、数週間~数年間使い続けることで起こるため、同じ化粧品を使い続けていても、ある日突然、湿疹や赤みが出てくるといったこともあります。アレルギーがある人は、抗原を少量でも使うとアレルギーが起こります。刺激性と異なり、濃度に依存しません。

BGやヘキサンジオールは、最近流行りのパラベンフリー、敏感肌用化粧品には必ずと言っていいほど入っていますが、刺激性は低いものの、防腐効果をこれらで出すためには高濃度で配合しなければならず、結局刺激性が高くなってしまいます。また、前述した通り、アレルギー性もありますので、敏感肌用化粧品を使ったら逆に肌の調子が悪くなったという場合、これらの多価アルコールに対するアレルギーも疑う必要があります。

皮膚に48時間化粧品を接触させるパッチテストは、主にアレルギー性を見る検査です。刺激性に関しては、皮膚の部位によって刺激に対する閾値が異なるため、通常のパッチテストでは正しく判断できません。顔や首に塗ってピリピリとした刺激や赤みを感じた場合でも、腕や背中の皮膚は鈍感でまったく赤みも出ないことがあるからです。

ちなみに、当院の調剤化粧水には、ヘキサンジオールを用いています。冷蔵保存で2ヶ月という使用期限のため、市販の常温3年間の化粧品よりはずっと配合量は少ないものの、それでも刺激を感じる方はいます。また、稀に最初は問題なく使えていても、途中から肌に合わなくなってしまうという方もいます。

ヘキサンジオール無しの化粧水も試作したのですが、やはり品質が保てず、現在はできる限り配合を少なくするというところに留まっています。(ゼロホワイトローションのみヘキサンジオール無しです。)

ヘキサンジオールが合わない方は、他の多価アルコールもだめかというと、必ずしもそうとは限りません。BGは平気であったり、そのまた逆もあったりしますので、試していくほかありません。(もしくは、グリセリン以外の多価アルコールが入ったものは一切使わないようにするかしかありません。)

化粧品会社は意外にアレルギーに詳しくない

当院へ来院される患者さんの多くは、もともと市販の化粧品にアレルギー(赤くなる、痒くなる、腫れる、湿疹ができるなど)症状がある方が、原因を調べたくて来院したというシチュエーションですので、当院でパッチテストを受けた方全員がアトピーやアレルギー体質の方です。

普通の方を集めてパッチテストを行った場合、陽性率はもっとずっと低いはずです。また、500例、1000例と症例数があれば、もっといろいろな知見が得られましたが、そこまで症例数は多くありません。なので、上記に書いたことは、あくまで当院で行ったパッチテスト症例の知見という解釈で読んでください。

化粧品会社は、原料会社が実地したアレルギーテストの結果や動物実験の結果、過去の実績などを参考に化粧品の処方設計を組みます。大手であればあるほど、自社の化粧品を健常者を対象にアレルギーテスト(パッチテスト、RIPT、スティンギングテスト)をしているケースが多いのですが、個別成分のアレルギー情報・データが十分に揃っているかというと、必ずしもそうではないケースもあります。

それは、問題のある化粧品のパッチテストを行うのは、医療機関であり、また、消費者は市販の化粧品を買ってアレルギーが起こったとしても、ほとんどの方は、化粧品会社にはクレームを入れず、使うのをやめて終わりです。つまり、化粧品会社へそういった消費者の声はあまり届きません。

医療機関も、化粧品アレルギーの患者さんが来たからと言って、いちいち化粧品会社に報告なんてしません。(茶のしずくのように、複数の患者に大きな問題が起こった場合は別ですが。)

アレルギーを起こした消費者のうち、ほんの数パーセントの方しか化粧品会社にクレームを入れませんし、これまた数パーセントの方だけしか皮膚科に行きませんし、行ったとしても医療機関から化粧品会社への報告はほとんどなされませんから、アレルギーデータを集めるのは大変だと思います。

大手などの管理がしっかりしている化粧品会社は、長年のデータとして蓄積しているのでしょうが、開示がされていないため、データとして共有されていません。また、化粧品のアレルギー情報があっても、どの成分にアレルギーを起こしたかまでを調べることは難しく、ほとんどなされていないのが現状です。

皮膚科に受診したとしても、通常は化粧品かぶれ程度の場合、弱いステロイドを数日使ってもらえば治るため、原因成分が特定されずにおしまいということがほとんどです。

そんなこんなで、医薬品と比較すると、各化粧品会社が、化粧品のアレルギーデータを十分に持っているかというと、必ずしもそうではないと考えられます。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]