肌のクリニック院長の肌ブログ

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ヒルドイドの美容効果と副作用について

time 2017/11/08

ヒルドイドローションやジェネリックの美容利用騒動からの続きです。前回の記事では、ヒルドイドローションの成分について考察し、ヒルドイドの有効成分はヘパリン類似物質であり、この成分に美容効果はないことを記載しました。

今回の記事では、ヒルドイドの美容効果の誤解、その副作用について記載していきます。

ヒルドイドの美容効果は?

「ヒルドイドクリームでアンチエイジング!」「高い美容液やクリームより美容効果あり!」「ヒルドイドローションでお肌すべすべになった!」などとSNSやブログで紹介されたこともあり、ヒルドイドやそのジェネリックであるビーソフテンで保湿すると肌がきれいになるんだと思っている方もいます。

しかし、すでに前回の記事で詳しく書いている通り、ヒルドイドやビーソフテンに美容効果がある成分は入っていません。有効成分のヘパリン類似物質にも美容効果はなく、その他に配合されている成分は、すべて一般的な化粧品にも使用されている原料ですので、市販されている化粧品と比較して、美容効果が高いわけではありませんが、なぜこのような誤解が生じるのでしょうか?

それは、配合されている合成界面活性剤の作用によります。界面活性剤は油と水を馴染ませやすくしますから、皮脂と保湿成分をしっかりと馴染ませます。ヒルドイドを使って、肌が潤ってすべすべになったように感じるのは、界面活性剤と保湿成分によるところがほとんどです。同様の使用感の乳液やクリームは、沢山市販されていますから、ヒルドイドだから特別ということはありません。

ヒルドイドじゃないと肌が荒れてしまう!

ヒルドイドの処方設計を見ると、ヘパリン類似物質が入ったシンプルな乳液という感じですが、設計が古いためか「旧表示指定成分」が比較的多く配合されています。旧表示指定成分は、体質によってアレルギーなどの皮膚トラブルを起こす恐れのある成分のことで、過去に表示が義務付けられていた成分です。最近の化粧品では、できるだけ旧表示指定成分を避けて設計するのが主流になっています。

ヒルドイドローションやクリームを使用すると肌が荒れてしまったり、赤くなってしまうという患者さんがいますが、これは旧表示指定成分やその他の成分にアレルギー性や刺激性があるためです。

逆に、ごくまれにですが、

「私、ヒルドイドしか肌に合わないので、処方してください。」

という患者さんがいます。医学的に考えると、そんなはずはないのですが、お話を伺ってみると、過去に高級化粧品をいくつか使って肌荒れを起こし、敏感肌用化粧品に変えても肌荒れを起こし、皮膚科でヒルドイドローションとソフト軟膏を処方されたら、それは肌が荒れなかったということだそうで、過去に似たような患者さんが何人かおられました。

このような個々人の経験から「ヒルドイドは医療用保湿剤だから肌に優しい。」「高級クリームなんかよりずっと美容にいい。」なんて誤解が生まれるのだと思いますが、前述しているとおり、ヒルドイドには旧表示指定成分が比較的多く含まれており、市販の化粧品と比較して肌に優しいとは限りません。

市販の化粧品で肌荒れを起こすと、角層のバリアが壊れている状態ですから、次にどんな化粧品を使っても肌が荒れてしまうことがあります。ある程度肌が落ち着いた段階でヒルドイドを使ったとすれば、「タイミングの問題で荒れなかっただけ」ということも考えられます。

また、旧表示指定成分だけがアレルギーを起こすわけではありませんし、アレルギーが起こる、起こらないは個々の体質に大きく依存しますので、ヒルドイドに含まれている旧表示指定成分にはアレルギーはないけれど、一般の化粧品によく使われている成分にはアレルギーがあったということも考えられます。

例えば、「BG」という成分にアレルギーを持っている方がいるとすると、BGは非常に多くの市販化粧品に配合されている成分ですから、市販化粧品のほとんどが肌に合わないと感じるようになります。そこで、ヒルドイドを処方されると、ヒルドイドにはBGが含まれていませんので、「ヒルドイドは使える!肌に優しい!」となるわけです。

肌に優しい、優しくないというのは個々人の体質、肌の状態によります。そういった意味では、保湿目的でヒルドイドを塗るといった使い方をしても悪くはありませんが(もちろん、美容目的であれば自費というのが前提です)、ヒルドイドでなくてもいいわけです。

ヒルドイドはパラベンフリー?

これもたまにある誤解なのですが、

「ヒルドイドはパラベンが入ってない医療用の保湿剤だから、安心よね。」

と言う方がいますが、普通にパラベンは入ってます。

ここではパラベンの是非は置いておきますが、前回の記事「ヒルドイドの他の成分は?」で書いているように、パラオキシ安息香酸エチルというのがエチルパラベン、パラオキシ安息香酸プロピルというのがプロピルパラベンです。医薬品表示と化粧品表示では名称が異なるため、紛らわしいですよね。

別にパラベンが入っていようがいまいが、肌に合っていればヒルドイドを使っても問題はありません。ただ、おかしなことに、パラベンなどの化学物質にはやたら煩いのに、医者から処方された保湿剤だからと、ヒルドイドを盲目的に使っている人がいることです。

私の知人でもその類の人がおり、「パラベン入ってるよ。」と教えたところ、軽いショックを受けていました。アトピー性皮膚炎の子供を持つお母さんは、パラベンなどに気を配っている方も多く、小児科でも同じようなやり取りがあるそうです。

ヒルドイドの副作用は?

「ヒルドイドは医薬品!医薬品には効果がある代わりに副作用があるもの!だから病気の人以外は使わないで!」と訴えかけている方もいますが、これは建前としてはその通りなのですが、ヒルドイドに限って言うと少し違います。

実際にヒルドイドは長年処方されています。皮膚科だけでなく、小児科、内科、婦人科、外科の医師もヒルドイドを処方している医師は非常に多いです。しかし、ヒルドイドが原因で起こる重篤な副作用を経験することはまずありません。

下記はヒルドイドクリームの副作用です。

ヒルドイドクリーム0.3%の副作用
総投与症例2471例中、23例(0.93%)に副作用が認められ、主なものは皮膚炎9件(0.36%)、そう痒8件(0.32%)、発赤5件(0.20%)、発疹4件(0.16%)、潮紅3件(0.12%)等であった。

2471例中23例、0.93%というのは比較的少なく、副作用の発現頻度は、同成分の化粧品(つまり、ヒルドイドクリームからヘパリン類似物質を省いたもの)と比べても、恐らくほとんど差はないはずです。

ヒルドイドクリームには、パラベンだけではなく、旧表示指定成分のラノリンアルコール、セトステアリルアルコールなども含まれていますから、ヘパリン類似物質の副作用と言うより、これらの成分によるアレルギー、接触性皮膚炎による症状だと推察されます。

次に、ヒルドイドクリームのジェネリックであるビーソフテンクリームの副作用も見てみます。

ビーソフテンクリーム0.3%の副作用
〇過敏症(頻度不明)
皮膚刺激感、皮膚炎、そう痒、発赤、発疹、潮紅等
〇皮膚 (頻度不明)
紫斑

頻度不明というのは、まれ(0.1%未満)よりも少ないことを表しています。こちらも、過敏症と皮膚症状のみで、重篤な副作用はありません。

ビーソフテンクリームは、ヒルドイドクリームと同じヘパリン類似物質0.3%配合ですが、添加物は異なります。ビーソフテンローションやクリームには、還元ラノリンやラノリンアルコールが配合されていません。旧表示指定成分の還元ラノリンやラノリンアルコールは、アレルギー性の問題(といってもそこまで多いものではありませんが)があるため、後発医薬品であるビーソフテンでは避けられたのだと推測されます。

ヒルドイドクリーム0.3%(先発品)ビーソフテンクリーム0.3%(後発品)
成分成分
ヘパリン類似物質0.3%ヘパリン類似物質0.3%
添加物添加物
グリセリン 、ステアリン酸 、水酸化カリウム 、白色ワセリン 、ラノリンアルコール 、セトステアリルアルコール 、セトステアリルアルコール・セトステアリル硫酸ナトリウム混合物 、ミリスチルアルコール 、パラオキシ安息香酸メチル 、パラオキシ安息香酸プロピル、イソプロパノールセタノール、ワセリン、流動パラフィン、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸マクロゴール、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸メチル、プロピレングリコール、D-ソルビトール

ヒルドイドクリームは効能追加時の副作用、ビーソフテンクリームは承認時の副作用が掲載されています。調査対象の症例数に違いがあるため、ビーソフテンにラノリンアルコールが含まれていないことで、副作用はヒルドイド>ビーソフテンと一概には言えないかもしれません。しかし、アレルギー性のある添加物を極力省くことで、副作用が少なくなるのは当然です。

また、逆にラノリンアルコールにはアレルギーを持たない人が、ビーソフテンに配合されているプロピレングリコールにアレルギーを持つこともあるわけで、結局は個人の体質と言えます。ただ、一つ言えることは、同じヘパリン類似物質0.3%入りの医薬品でも、添加物の種類によって副作用の種類や発現頻度が変わるということです。

日常診療では化粧品による有害事象(赤みやかぶれ、腫れなど)のほうが、ビーソフテンクリームの副作用よりも多く診ます。化粧品のほうが多く流通しているため、もちろんこれだけでは単純に比較はできませんが、当院では院内で化粧品を調剤していることもあり、化粧品の有害事象やアレルギー性などを調べていましたが、ビーソフテンクリームが化粧品と比較して副作用が特段に多いかと言うと、そんなことはありません。

つまり、医薬品だから危険、化粧品だから安全とは一概に言えないということです。

ヒルドイドやビーソフテンに配合されている成分自体にアレルギーや過敏症がなく、薬剤禁忌(使用してはいけない人)に当てはまらなければ、保湿のために長期間使っていたとしても安全性は高い製剤であると言えます。(もちろん、副作用がゼロであるとも、保険適用で美容目的で使って良いと言っているわけではありませんので、念のため。)

また、ヒルドイドの使い過ぎで、副作用でニキビができる!と主張する方もいるようですが、これはヒルドイドに限らず、油性成分を配合している乳液、クリーム、軟膏などの化粧品でも同様のことが言えます。内容成分から見ても、ヒルドイドだから特別ニキビを悪化させやすいということはありません。(参考:油性成分あれこれ | ニキビを悪化させるオイル

※アイキャッチ画像はマルホ株式会社の公式サイトより引用

次回、「ヒルドイドは保険適用外にすべきか」に続きます。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]