肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

EGF(上皮成長因子)配合化粧品の問題点

time 2015/09/23

市販の再生因子、成長因子配合化粧品に謳われているような効果はあるのか

肌再生因子であるEGF(上皮成長因子)が1962年に発見されてから、国内で2005年に化粧品の外用成分として認可がおりました。EGFの皮膚細胞新生作用(新しく細胞を作る作用)は非常に高いため、化粧品成分ではなく、医薬品成分に分類するべきだとの議論が起こっています。化粧品成分は人体(肌)にとっては、治療のような効果があってはならないと薬事法で決められているからです。

私は、現状を見るとどちらでも良いように感じます。というのは、市販のEGF配合化粧品で本当に効果があるものは、かなり少ないのではと思っているからです。

私がそのように思う理由は、市販の製品の多くには以下に挙げる問題点があるからです。

問題点1 濃度、量、力価が不明

市販の化粧水やクリームには「EGF配合」と謳っていても、どれくらいの濃度と量で配合されているのか不明な製品がほとんどです。「10倍濃度EGF原液」などと謳っている美容液も数多く出回っていますが、何に対して10倍なのか不明であり、力価も濃度も書いていない商品が沢山あります。

そもそもEGFの原料はほとんどが凍結乾燥粉末として出荷されますので、それを溶解した時点で、どれだけ薄くなっているかわからず、何をもって原液と言っているのか意味がわかりません。極微量配合していただけでもEGF配合と広告できるため、化粧品にEGFがどれだけ配合されているかは、必ず製造元へ確認する必要があります。なお、再生因子の配合量や配合濃度の表記は統一されておらず、非常にわかりにくくなっているため、抑えておくべきポイントを簡単に説明しておきます。

まず濃度の表記ですが、1ppm = 0.0001% = 1μg/ml = 1μg/gです。次に力価ですが、力価とは活性の強さを表します。力価が高いほど効力が強くなります。同じEGFの配合量でも、使用しているEGF原料の違いで力価が異なります。

例えば当院の調剤化粧品で使用しているEGFの活性力価は1μgあたり1090IUです。原料によっては、1μgあたり600IUのものもあれば、1μgあたり1600IUのものもあります。IUとは国際単位のことです。この濃度と力価を覚えておけば、どの化粧品の効果が最も高いのかを知ることができます。ただし、濃度や力価を偽っている商品に関してはこの限りではありません。

覚えておくべきポイント
EGF濃度 1ppm = 0.0001% = 1μg/ml = 1μg/g
EGF力価 1μg = 1090IU(※当院のEGFの場合)

それではいくつか例題を出してみます。
Q1. EGF0.1ppm濃度の化粧水 100mlに含まれるEGFの量は?

答えは0.1μg/ml×100ml = 10μgです。

Q2. EGF0.1ppm濃度のクリーム 50gに含まれるEGFの量は?

答えは0.1μg/g×50g = 5μgです。

ppm濃度から量を求める場合は上記のようになるのですが、同じ量のEGFを水に溶かした場合とクリームに溶かした場合で、厳密には密度の違いが出るので、濃度に若干ずれが生じます。ここでは大まかに説明するために密度を1としてg=mlとして扱います(実際にもそれでほとんど問題ありません)。

Q3. EGF0.1ppm濃度の化粧水 100mlに含まれるEGFの活性力価は?

答えは化粧水100ml中にはEGF10μgが入っていますので、10×1090 = 10,900IUです。(※当院のEGFの場合)

力価 = 効力ですので、力価がどれくらいかで製品の効果がわかります。ただ、力価が高くても効果を得られないケースがあります。その問題点について次に触れます。

問題点2 活性低下の可能性

EGFやFGFなどの再生因子は、人の体の中に存在するタンパク質です。タンパク質というと何を思い浮かべますか?恐らく肉や魚をイメージされた方が多いと思います。「アミノ酸が結合したもの」というのも正解です。肉や魚が腐敗するように、再生因子にも腐敗(微生物による変質)が起こります。

また、再生因子は条件によっては容易に変性(腐敗とは異なります)が起こり、活性が低下します。どれくらいで活性が低下してしまうかは、再生因子の種類や製剤ごとに異なります。例えば製薬会社のbFGF(線維芽細胞増殖因子)は、凍結乾燥粉末で冷暗所に保存していた場合3年間安定ですが、常温の明るい場所に置いておくと、乾燥粉末の状態でも21日目から「沈殿物、重合体、スクシンイミド体、低分子化分解物及び酸化体又は脱アミド体の生成」が起こることが記載されています。

乾燥粉末でもこのような変性が起こるため、溶液化した場合はなおさら活性が低下しやすくなります。bFGFを溶液化すると、10度以下の保存状態でも17日目から重合体を認めるようになるとの記述があります。

再生因子を扱っているとある会社の社長に伺ったところ、過去に市販のEGF化粧品数種類の活性化試験をしたところ、EGFの活性が残っている製品はその中には一つもなかったそうです。

比較的安定度が高いEGFですらそのような状態なので、安定度が低いFGF(FGFの中でも種類によって安定度の違いはあるかと思いますが)を配合した化粧品に、どれだけその活性が残っているのかは疑問です。

EGF化粧品販売メーカーは、そのほとんどが同じ業者からEGF原料を輸入、または購入しているか、自社工場を持たずに製品製造だけを依頼するOEMですので、そのあたりのことを販売メーカーに問い合わせても、知識が乏しく全く的を射た回答を得ることはできません。

国内、国外(韓国や中国)を含めてEGFの原料メーカーに何社か問い合わせましたが、原料メーカーによっても回答がまちまちです。凍結乾燥粉末で冷暗所保存という条件であれば、数年間安定しているというのはどのメーカーも共通ですが、溶液化した後の安定性に対する回答は様々でした。

「冷蔵保存で3ヶ月間」としているメーカーもあれば「常温で1年間」としているメーカーもあります。「防腐剤なしでは1ヶ月間、防腐剤ありでは1年間」と回答してきたメーカーもあります。このメーカーは、タンパクが変性して活性が低下するという意味ではなく、腐敗して使えなくなるという意味で回答してきたものと思われます。

上記のような問題があるにもかかわらず、市販されているEGF配合化粧品やFGF配合化粧品の中には、常温で長く保存されているものが数多くあります。

ほとんどの販売メーカーのEGF化粧品には、製造年月日や有効期限が書かれていません。これは、未開封の状態で3年以上品質が保持される化粧品については、製造日も使用期限も表示しなくて良いという決まりがあるためです。

しかし、EGFの活性が3年間保たれているという意味ではありません。ただ単に防腐剤を入れて、化粧品が3年間経っても腐らずに使えますよというだけのことですので、注意が必要です。製造日が気になる方は、メーカーへロット番号(数字とアルファベットで記載されています)を伝えて問い合わせると、いつ製造されたものかを教えてもらえます。

果たして製造されてから1年以上も常温で経過している製品に、どれだけEGFやFGFの活性があるのか、大いに疑問があります。

ちなみに、実際には再生因子の種類によって活性は異なるでしょうし、どの再生因子が、どのような環境下で、どれくらいの活性の低下をきたすのかを調べた試験はありません。ヒトプラセンタの製剤や幹細胞の培養上清などの液体は、一定の臨床効果を認められるため、すべての成長因子が液体化では活性を失っているわけではないと考えます。しかし、タンパク質の長期安定化は、現代の技術では凍結乾燥(フリーズドライ)が最も優れており、溶液化するとフリーズドライよりも活性が低下しやすいことは確実です。

問題点3 ナノ化EGF化粧品の嘘

EGFのナノ化についてメールで質問があったので、追記します。最近のEGF化粧品は「EGFをナノ化しているので浸透性が違います!」などと謳っている広告が非常に多くなってきています。

ナノ化というのは、分子量を小さくすることです。EGFの分子量を小さくして肌の奥へ浸透させ、効果を発揮させると謳われています。

EGFは分子量が6000のペプチドです。ペプチドとはアミノ酸が結合してできた、タンパク質のことです。EGFはアミノ酸が53個つながってできており、ナノ化によってこのサイズより小さく分断した場合は、もっと小さなペプチドか、アミノ酸にまで分解されます。

それはもはやEGFではありませんので、EGFの機能を持たないただのペプチドか、アミノ酸となってしまいますから、ナノ化したEGFは何の効果も期待できません。医療用の成長因子(bFGF)も、当然ナノ化されていません。成長因子のナノ化は全く意味がないばかりか、タンパク構造を壊してしまっていることになりますので、ご注意ください。

また、レシチンなどの界面活性剤を配合して、浸透率を高めただけのことを「ナノ化」と謳っている企業もありますが、ナノ化とは全くことなります。

問題を解決するには

以上の問題点から、現状は市販のEGF配合化粧品の効果を懐疑的に見ています。当院ではこのような問題点を解決するべく、以下の4点を徹底しています。

1.調剤した化粧品の再生因子製剤の濃度、量、活性力価をきちんと提示しています。

2.再生因子は凍結乾燥粉末で冷蔵保存しています。

3.一度に調剤する量を限定し、作りおきはできるだけ行わず、調剤後一定期間経過したものは廃棄処分としています。そのため、当院の調剤化粧品はおおよそ1週間以内に作成された新鮮なものです(最大で4週間で廃棄処分としています)。

4.保冷剤入りの袋に入れて処方し、家で冷蔵保存をしてもらっています。また、必ず有効期限内に使用していただきます。

このようなことを徹底して、ようやく本物の再生因子配合化粧品が処方できると考えています。上記のような2つの問題点を、販売メーカーが積極的に触れない理由は、問題点をクリアするためにはコストや手間が非常にかかるからで、現実的ではありません。

理想的な再生因子配合の化粧品を作れるのは院内調剤だけだと考えています。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]