肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

化粧品の界面活性剤は必要なもの?

time 2018/06/28

界面活性剤の図皆さん、こんにちは。今日は、界面活性剤の意義について、お話ししたいと思います。

当院では、調剤化粧品を処方していることもあり、化粧品の成分に関心をもつ患者さんが多く来院されます。化粧品の成分について詳しく勉強している方ほど、界面活性剤の刺激性やアレルギー性が心配になり、界面活性剤ができるだけ少ない化粧品を選ぶ傾向になるようです。

実際、当院でも界面活性剤が少ないシンプルな化粧品によるケアをおすすめしていますし、当院の調剤化粧品もそのようなコンセプトで処方設計しています。

市場においても、近年のナチュラルコスメ需要の拡大とともに、合成界面活性剤フリーと表記された化粧品も増えてきた印象があります。そんなマイナスのイメージが根付いてしまった界面活性剤ですが、今回は、界面活性剤が善か悪か、という二元論的な議論ではなく、何故、界面活性剤が必要なのか? との原点に立ち返って、界面活性剤の担う重要な役割についてお話ししていきます。

界面活性剤の役割

化粧品の中には、油や水などの液体、粉体などの固体や、気体など、混じり合わないはずの成分が、1つの製品の中に複合的に配合されています。

ここで、液体・固体・気体などの相が接すると、その界面では、界面エネルギーと呼ばれる過剰エネルギーが発生し、系が不安定化するため、製剤が崩壊してしまいます。そのため、界面エネルギーを下げて、系を安定させるために、界面活性剤が必要となります。

O/W型エマルションとW/O型エマルション

さて、液体の中に液体が分散したものを、エマルション(エマルジョン)といいます。化粧水や乳液、クリーム、リキッドファンデーションなど、化粧品にはエマルション型の形態をとるものが多いです。

エマルションには、水の中に油が分散した水中油型(O/W型=オーダブリューがた)と、油の中に水が分散した油中水型(W/O型=ダブリューオーがた)があります。

O/W型は、水の中に油があるOil in Water, W/O型は油の中に水があるWater in Oilと考えると、覚えやすいかと思います。

OW型とWO型エマルション

エマルションの性質は、この外相によって特徴づけられるため、O/W型はさっぱりとした使い心地となり、W/O型は、しっとりとした使い心地となります。W/O型は水を弾くため、汗による化粧崩れを起こしにくい特徴がありますが、水だけでは落としにくくなります。

エマルションは、先ほど説明した理由から熱力学的に不安定なので、そのままの状態だと製剤が崩壊してしまうため、界面活性剤を添加して、界面を安定化させる必要があります。

界面活性剤は、水になじみやすい親水基と、油になじみやすい親油基をもちます。界面活性剤は、水と油の両方になじみますが、より親水的な界面活性剤と、より親油的な界面活性剤に分けられます。

より親水的な界面活性剤は、O/W型エマルションを形成し、より親油的な界面活性剤は、W/O型エマルションを形成します。水と油への親和性を表す数値はHLB値で表され、HLB値が異なる界面活性剤と基剤を組み合わせて、O/W型に近いW/O型のクリームを作ったりと、微妙な調整が可能です。

界面活性剤の分類

界面活性剤は、主に4つ(+α)に分類されます。詳細については以前の記事「化粧品の界面活性剤あれこれ」を参照していただければと思いますが、今回も軽く触れておきます。

①アニオン界面活性剤

  • 起泡力・浸透力・分散力が高い。
  • 油への溶解性が低く、ノニオン系界面活性剤よりも可溶化・乳化力は劣る。
  • 石鹸は、古くから使用されており、毒性も低い。

②カチオン界面活性剤

  • 毛髪の表面に吸着し、柔軟効果を示す。
  • 殺菌効果もあるが、一般に毒性が高く配合量に制限がある。

③アンホ(両性)界面活性剤

  • アニオン界面活性剤と組み合わせると、起泡力を高め、皮膚への刺激性を低下させる。
  • 抗菌性を示す。

④ノニオン(非イオン)界面活性剤

  • イオン界面活性剤と比べて毒性が低い傾向にある。
  • 可溶化力・洗浄力に優れている。

⑤高分子界面活性剤

分子量が数千以上で界面活性作用をもつものは、高分子界面活性剤として分類されることもあります。

  • ポリアクリル酸系、セルロース系、プルロニック系、シリコーン系
  • 界面張力低下能や浸透力は低いが、乳化力・分散力は優れる。
  • 起泡性が低く、毒性も低い。

界面活性剤のミセル

ミセル次に、界面活性剤の集合現象について説明します。

界面活性剤の濃度が高くなると界面活性剤同士が集まり、球状の集合体を形成します。この界面活性剤の球状の集合体を「ミセル」と呼びます。学生時代の理科の授業でも、耳にしたことがあるかもしれませんね。

界面活性剤は、濃度が低い時は単分子の状態で存在しますが、臨界ミセル濃度を超えると、集合してミセルとなり、さらに濃度が上がると液晶を結成します。この集合現象は、化粧品の配合や安定にとって、重要な役割を担います。

界面活性剤は、水では親水性部分を外側に、親油性部分を内側にしたミセルを作ります。水の中に油を混ぜた場合、油は水に溶けずに分離してしまいますが、ここで、界面活性剤のミセルが存在すると、ミセルの内部に油性成分が溶け込みます。

ミセルの直径は光の波長より短いため、透明に見え、水の中に完全に油が溶けているように見えます。これを、「可溶化」と呼びます。

この「可溶化」と、水と油を混ざり合った状態にする「乳化」とは、異なる現象で、可溶化は水に油が完全に溶けて透明に見えますが、乳化は混ざりあった状態なので白色になります。

乳化は、水相と油相の二相系であり、一度分散しても、時間の経過とともに、分離してしまいます。一方、可溶化は一相系で熱力学的に安定しており、一度溶けると、温度や圧力が一定であれば分離しません。すなわち、成分にあった適切な界面活性剤を、適切な量で配合すると、化粧品を安定した状態に保つことができるのです。

濡れた手で使えるクレンジング

可溶化は、メイクを落とす上でも重要な役割をもちます。ウォータープルーフの日焼け止めや、にじみにくいマスカラ、落ちにくいリップなどは、化粧崩れしにくく重宝しますが、その分落としにくいという欠点を持ちます。

このようなメイクを落とすには、メイクを肌からしっかり取り払うことと、水で洗い流す際に再び肌につかないように引き離す必要があります。つまり、油性成分を界面活性剤で可溶化する必要があるのです。

通常のオイルクレンジングは、オイルと少量の界面活性剤で作られています。濡れた手で使用すると、オイルと水が混ざってすぐに乳化してしまうので、界面活性剤の力が低下してしまい、洗浄力が落ちてしてしまいます。

濡れた手でも使用できるタイプのオイルクレンジングは、ある程度の水を可溶化できるように、界面活性剤の種類や量が調整されています。クレンジングオイル中に水が混入しても、オイルの中に溶けてしまうため、常に油と肌が触れる状態となり、油性成分のメイクと馴染んで浮かせます。

クレンジング剤を洗い流す際に多量の水が加わることで、界面活性剤が親水基を外、親油基を内に向けた構造に変化します。油性のメイク成分はミセル内に抱え込まれ、肌へ再付着せず、すっきりと流し取ることができます。

長文になってしまいましたが、ここまで界面活性剤の役割について、まとめてみました。界面活性剤は、刺激性の高い成分も含むものの、製品の安定化や機能にとって重要な成分であることもご理解いただけたかと思います。

ご自身にとって、アレルギーを引き起こす成分や、刺激を強く感じるものを避けることが重要なのは言うまでもありませんが、過剰に怖がるのではなく、適切な種類、適切な量として配合された製品を選択していくことが大切ですね。

今回は薬剤師でもある副院長の涌水がブログを担当しました。

肌のクリニック 院長

岩橋 陽介

岩橋 陽介

東京のニキビやレーザーによるシミ・ニキビ跡治療などを専門とする美容皮膚科です。医師・薬剤師である涌水DRにも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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