美肌ブログ | 肌のクリニック

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シワを改善するレチノール配合化粧品について

time 2018/11/04

シワの改善効果があるレチノール配合の化粧品の宣伝をよく見るようになりました。これは、2017年にレチノールが厚生労働省からシワ改善効果があると認められたからです。

レチノールに先立って、2016年にニールワンという化粧品成分がシワ改善に有効であるという承認を得ており、「シワに効く」効果を謳った製品に各社力をいれています。

レチノール配合の化粧品は、資生堂エリクシールのリンクルクリームなどが代表的な製品ですが、コスメインフォで調べてみると、国内だけでも120種類以上の化粧品にレチノールが配合されています。

今回は、レチノールのシワに対する効果や、美容医療で行われているトレチノイン療法との違いなどを書いていきます。

レチノール(ビタミンA)

レチノールと言うと聞き慣れない方も多いかもしれませんが、レチノールとはビタミンAのことです。

ビタミンAは、広義にはレチノール(C20H30O)だけではなく、レチナール(C20H28O)、レチノイン酸(C20H28O2)を含みますが、狭義にはレチノール=ビタミンAと呼ばれます。

ビタミンAと聞くと、親しみやすく感じるのではないでしょうか?

レチノールが、細胞の分化や増殖に関わっていることは古くから知られており、お肌に塗ると、新しい細胞が生まれて、お肌を若返らせる効果があります。

トレチノイン(レチノイン酸)

レチノールの効果について書く前に、医療用に処方されている「トレチノイン」について記載しておきます。

トレチノインとは、レチノイン酸(C20H28O2)の全トランス型で、All-Trans-Retinoic Acidの頭文字を取って、ATRA(アトラ)とも呼ばれていますが、トレチノイン=レチノイン酸と考えていただいて構いません。レチノイン酸は、ビタミンA誘導体で、先に述べたように、広義にはビタミンAに含まれます。

トレチノインは、皮膚科では古くから、シワだけでなく、ニキビ、シミ治療に用いられています。 

ニキビ治療

トレチノインは、表皮の角化細胞を増殖やターンオーバーを促進して、角質を剥がれやすくし、毛穴を詰まりにくくします。炎症を鎮める作用や、皮脂の分泌を抑制する効果もあるため、ニキビをできにくくします。

海外では古くからクリームや軟膏がニキビ治療に用いられています。また、アメリカでは、今年8月にトレチノインが0.05%配合されたALTRENO  lotion(オルトレノローション)という化粧水タイプの薬が、FDAからニキビ治療目的で認可されています。(参照:FDA ALTRENO lotion

シミ治療

トレチノインは、細胞のターンオーバーを促し、表皮のメラニンを排出させます。美白剤のハイドロキノンと組み合わせたシミ治療は、東大の吉村先生が研究され国内で広く普及しました。

136人のアジア人を対象とし、トレチノインとハイドロキノンを3ヶ月以上使用した試験で、老人性色素斑(加齢によるシミ)や炎症後色素沈着の改善を認めています(※1)

また、トレチノイン0.2~0.4%とハイドロキノン5%を併用した試験で、乳首と乳輪の黒ずみを改善させたと報告されています(※2)

(※1)Yoshimura K, Harii K, Aoyama T, Iga T. (2000) Experience with a strong bleaching treatment for skin hyperpigmentation in Orientals. Plast Reconstr Surg. 2000 Mar;105(3):1097-108; discussion 1109-10.

(※2) Yoshimura K, Momosawa A, Watanabe A, Sato K, Matsumoto D, Aiba E, Harii K, Yamamoto T, Aoyama T, Iga T. (2002) Cosmetic color improvement of the nipple-areola complex by optimal use of tretinoin and hydroquinone. Dermatol Surg. 2002 Dec;28(12):1153-7; discussion 1158.

今では当たり前のようにされているトレチノインとハイドロキノンを使ったシミ治療ですが、当時の功績があったからこそのことです。

当院でもシミ治療にトレチノインを用いておりますが、よりしっかりと治療効果が現れるレーザーの導入によって、現在は補助的な治療となっています。トレチノインの使い方については、当院の「トレチノイン・ハイドロキノン」のページもご参照ください。

シワ治療

トレチノインは、皮ふの細胞の新生を促すとともに、真皮の線維芽細胞を刺激して、コラーゲンの産生を促進します。

しわ治療では、トレチノインは90年代半ばにFDAからしわ改善薬として認可を受けており、目尻などの小じわ改善に広く利用されています。

レチノールとトレチノイン(レチノイン酸)の違い

広義には、同じビタミンAに含まれるレチノールとトレチノイン(レチノイン酸)ですが、その違いは何なのでしょうか?下記の表に簡単にまとめました。

 レチノール
(ビタミンA)
トレチノイン
(レチノイン酸)
生理活性150~100
しわ改善効果
化粧品/医薬部外品不可
副作用

生理活性と効果

レチノールは、体内で効果を発揮するレチノイン酸に変化します。つまり、トレチノイン(レチノイン酸)は、生理活性を発揮する物質の本体であり、トレチノインの生理活性はレチノールと比較して50倍~100倍です。

しわ改善作用もレチノイン酸の生理活性の強さに依存するため、レチノールの作用は大中小の小より小さい「微」と表現していますが、ゼロではありません。

資生堂が昨年発表した研究によると、レチノール配合の化粧品で、8週間で首のしわが改善したという報告があります。(※3)二重盲検試験ではないところが、残念なところです。

レチノール入りのクリームは、海外ではかなり以前から普及しており、それなりに効果はあるようです。

(※3) 株式会社資生堂(2018)資生堂、首のしわの改善効果を新発見、8週間で実現 ~レチノールの新効果 真皮に届きコラーゲン・ヒアルロン酸など産生促進~

ちなみに、トレチノインのしわ改善効果を「大」としていますが、あくまでレチノールと比較した場合であり、額やほうれい線の深いしわなどには大きな効果を発揮しません。そのようなしわには、ヒアルロン酸の注入や、糸によるリフトアップ手術などの美容治療のほうが効果的です。

化粧品への配合

トレチノインは、その生理活性作用の強さから、化粧品や医薬部外品への配合は認められていません。それに対して、作用の弱いレチノールや、レチノールにパルミン酸を結合させたパルミチン酸レチノールは、化粧品や医薬部外品への配合が認められています。

副作用

トレチノインは、高確率で赤みや落屑(皮ふの剥がれ)が起こります。

それに対してレチノールは、作用が弱いので副作用も小さいことは確かなのですが、実際にはレチノール入りの化粧品でも、赤みや落屑、かぶれなどの皮膚トラブルが多くあります。

これらの副作用は、濃度依存性に強くなるため、極微量のみレチノールを配合して、なるべく有害作用を起こさないようにしている化粧品メーカーも沢山あります。しかし、効果も濃度依存性のため、配合量を少なくするれば小さくなります。

純粋レチノールと真皮という表現

資生堂は、「純粋レチノール」配合と宣伝していますが、純粋レチノールはレチノールと全く同じもので、言い回しを変えているだけです。公式サイトでそのことについては明記はしているものの、以前からトラネキサム酸をm-トラネキサム酸と宣伝していたり、資生堂の宣伝のやり方は、どうなんだろうと思っていまいます。広告戦略としては正しいのでしょうが、消費者の中には、新しい成分と勘違いしてしまう方もいるのではないでしょうか?

「真皮まで届く。」という広告表現は、化粧品に詳しい方だと、使ってはいけない表現に思えるかもしれません。なぜなら、化粧品は、表皮という一番上の層までしか作用しないことになっているからです。

しかし、レチノールとニールワン(ポーラ・リンクルショットの有効成分)という2つの成分は、厚生労働省からシワ改善の承認を得ています。シワは真皮に有効成分が届かなければ改善しませんので、この2つの成分を配合してシワ改善の承認を受けた製品は、真皮まで届くという文言を使用しても問題ないことになります。

例えば、前回記載した「ハンドピュレナ」という化粧品は、「手肌の『土台』へハリを与え、『底』からふっくら」などの広告文を使用し、小さな※印で、土台と底は「角質層(表皮の一番上の層)」と注意書きをしています。

レチノールやニールワンのように真皮にアプローチする成分を配合しておらず、効能効果は認められていないわけですが、肌の「土台」や「底」と書かれていると、真皮まで作用するかのような誤解を招き、問題となる可能性がある広告表現です。

実際のシワ治療

ここまで読んでいただいた方は、美容医療の現場で、レチノールではなくトレチノインを使用する理由がお分かりいただけたと思います。

しかし、さらに言うと、トレチノインですら、シワ治療には積極的に使われておらず、主にシミやニキビ治療に用いられているという現状があります。

なぜなら、トレチノインは赤みやかぶれが起こりやすい成分のため、それを嫌う患者さんが多いからです。効果はレチノールと比較すれば大きいとは言えますが、他の美容治療と比較すれば大きなものではありません。

マイルドな効果を望むのであれば、レーザーや光治療など、ダウンタイムがない他の治療がいくらでもありますし、しっかりとした効果を望むのであれば、ヒアルロン酸やポトックス注射、スレッドリフトなどの治療があります。

つまり、レチノールよりも50~100倍も生理活性の強いトレチノインですらシワ治療の主役ではないのだから、レチノール入りの化粧品に過度な期待をすべきではないということです。

患者さんの中には、シワ改善効果のある高級クリームを何ヶ月も使ったけれど、全然効果が出なかったという方もおられますが、もともと強力な効果があるわけではありません。化粧品は夢を売るものですから、きれいな肌の女優さんの広告を見て、期待と妄想を膨らませるのではなく、あくまで化粧品、医薬部外品として割り切って使用するようにしましょう。

書いている人

医師 岩橋 陽介

医師 岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の院長をしています。当院勤務の美容皮膚科医にも時々記事を書いてもらっています。 [医師紹介]

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