美肌ブログ | 肌のクリニック・高円寺院・麹町院

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保湿・肌の最外層の角層をケアする1

time 2019/02/14

スキンケアにとって、最も重要なのは肌の最外層である角質層(角層)をケアすることです。

コルネオセラピー

表皮の拡大図

角層は、上の図のように何層にも積み重なっていますが、角層の厚さは、わずが10ミクロン(10μm=0.01mm)から20ミクロンほどで、クレラップがちょうど0.01mmの厚さなので、サランラップと同程度の厚さくらいしかありません。

参考:田上 八朗「皮膚の表面,角層からみた皮膚科学」東北医誌 115: 7-12,2003

角層に問題があると肌のターンオーバーが上手く進まず、健康的で美しい肌を作ることができません。

角層は、英語で「stratum corneum(ストラタム・コルネウム」と言い、角層ケアを重視したスキンケアを、コルネオセラピー(corneotherapy)・コルネオケア(corneocare)と呼びます。

今日は、角層ケアについて詳しくお話ししていきます。

角層の解剖学的構造

まずは、角層の解剖学的構造について説明します。

角層は、前述したとおり、表皮の最外層にあり、厚さは0.01mm~0.02mmほどの薄い膜です。

角質の細胞は、脱核(だっかく)といい、核がなくなって死んでしまった細胞です。その死細胞である角質細胞が幾重にも積み重なって、重層化した構造となっています。

角質細胞の中は、ケラチン・フィラグリン(タンパク質)とその分解産物で満たされており、細胞外周をcornified cell envelope(周辺帯=しゅうへんたい 角質細胞の細胞膜を裏打ちするタンパク質が架橋したもの)といわれるタンパク質の膜で囲まれています。

さらにその外周を、セラミドが配列したcorneocyte lipid envelopeが囲んでいます。

参考:「あたらしい皮膚科学第2版」

このような構造によって、角質細胞は強い構造を保っています。

角質細胞と角質細胞の間は、角質細胞間脂質で満たされており、その脂質の30~50%を占めるのがセラミドです。

保湿の重要な3因子

保湿作用として、以下の3つが重要な因子です。

1.天然保湿因子(natural moisturizing factor:NMF )

水分を保持する作用があります。

NMFを語る上で、フィラグリンは欠かすことのできない重要なタンパク質です。

表皮顆粒層にあるプロフィラグリンが分解されて、フィラグリンが産生されますが、角化細胞の中ではケラチンを凝集する作用をもち、角層上層まで上がると代謝され、ピロリドンカルボン酸やアミノ酸となってNMFとして働きます。

湿疹などの炎症があると、フィラグリンの産生は低下することが知られています。

その他、乳酸、クエン酸、尿素、無機塩などもNMFを構成しています。

年齢とともにNMFは減少します。

2.角質細胞間脂質

表皮の細胞内で合成された脂質成分が、角層を形成する際に細胞外に分泌されたもので、セラミド、コレステロール、脂肪酸から構成されます。

これらは隣接する分子同士の親水部と疎水部が整列し、層状に繰り返すラメラ構造を形成しています。

バリア機能により体内からの水分蒸散を抑制する効果があります。

3.皮脂膜

皮脂は顔、前胸部、上背部で多く分泌されます。

角層の水分を保持する力は上記の2つの因子と比べると劣りますが、外敵な刺激から肌を守る作用があるため、適度な皮脂は重要な成分となります。

皮脂は、思春期に急激に増加しますが、女性については30歳前後から減少し、閉経前後からさらに減少する傾向にあります。男性については女性よりも減少率は低く、30歳前後から若干低下し始めますが、60歳以上まで保たれる方もいます。

年齢とともにNMFや皮脂といった保湿にとって重要な因子が減少していくと、ターンオーバーが乱れ、皮脂膜は薄くなり、逆に角層は厚くなるため、潤いが乏しくくすんだ肌となっていきます。

また、健常な角層を保つことにより、紫外線に対するダメージも少なくなるため、光老化の予防にも角質ケアが重要です。

つまり、エイジングケアや美容的な観点からも、角質ケアが非常に重要であることがお分かりいただけたかと思います。(重要とは言っても、角層をケアしたからと言って、目の下のたるみが取れたり、シミが取れたり、手の老化が治ったりといった魔法のようなことはありませんので、ご注意くださいね。)

ニキビと角層の関係

さて、当院ではニキビの患者さんの治療に力をいれていますが、ニキビの患者さんは一般的に皮脂が多い傾向にあります。皮脂は炎症を惹起する作用があるからです。

ニキビの患者さんにおいて、健常者と比較してスフィンゴ脂質(セラミドおよび遊離スフィンゴシン)の量が少なく、バリア機能が障害されて異常角化が起こるという報告もあります。

参考:「Impaired water barrier function in acne vulgaris.」Arch Dermatol Res. 1995;287(2):214-8.

セラミドの量が少ないと、外からの刺激を受けやすく、IL-1αなどの炎症性サイトカインが放出されるため、毛包漏斗部の異常角化と角質細胞接着性の亢進により、毛包が閉塞するためといわれています。

保湿剤について

保湿剤にはエモリエントとヒューメクタントの2つに区別する分類があります。

※その他、エモリエントとモイスチャライザーの2つに区別する分類もありますが、表面を覆って水分の蒸散を防ぐものと、水分を保持させるものという区分、という意味では概ね概念は似ているかと思います。

ここでは、エモリエントとヒューメクタントに分けて説明します。

1.エモリエント

表面を覆って水分の蒸発を防ぐものです。

エモリエント自体は水分保持力が低いのですが、水分蒸散を防ぐことで、結果的に角質水分量を高めることができます。

一般的に油分として知られる成分です。

例として、以下のものが挙げられます。

  • 炭化水素…ワセリン、スクワランなど。
  • 油脂…脂肪酸とグリセリンのグリセロールエステル。オリーブオイル、アルガンオイルなど。
  • ロウ(ワックス)…脂肪酸と高級アルコールのエステル。ホホバオイルやミツロウなど。
  • エステル油…油脂やロウを合成により作ったもの。天然油脂には不飽和結合が含まれ酸化しやすい性質があるものが多いです。そこで、水素添加させて安定化させた油脂や、抗酸化剤が添加されることもあります。また、使用感をよくするために、シリコーンオイルもよく配合されますが、シリコーン自体のエモリエント効果はあまり高くありません。
  • セラミド…セラミドは疎水基と親水性基をもち、両親媒性があります。
  • セラミドの保湿メカニズムは諸説あるようですが、ラメラ構造に由来するエモリエント効果によるものと考えられています。

上記油性成分については、以前のブログ「油性成分あれこれ | ニキビを悪化させるオイル」にも詳しく記載がありますので、ぜひご参照ください。

2.ヒューメクタント

角層の中を潤すものです。

大部分は水溶性の低分子です。角層に浸透し、ケラチンと相互作用して角層への保湿性を発揮します。

例として以下のものが挙げられます。

  • グリセリン…大部分の保湿剤に配合される成分です。アレルギー性も一般に低い成分です。
  • NMF … 化粧品には、ピロリドンカルボン酸ナトリウム(PCA-Na)、尿素、乳酸やクエン酸などの有機酸およびその塩類が配合されます。
  • 無機塩類…炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウム、硫酸ナトリウムなど。
  • 保湿効果はあるものの、エマルションが不安定になるためクリームなどにはあまり使用されません。入浴剤に配合されることが多いです。
  • ムコ多糖類…ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、ヘパリノイドような高分子のヒューメクタントです。
  • 非常に高分子のため角層には浸透しませんが多量の水を保持する性質を持つため、よく使われる成分です。

グリセリンは、一部の研究においてアクネ菌の増殖作用も報告されています。

参考:「化粧品でアクネ菌が増える?」

ニキビは体質的な要因が大きいため、グリセリンフリーの化粧品を使用したからといってニキビが改善するという研究報告はありませんが、グリセリンフリーの化粧品を手作りで作ってみても良いでしょう。

グリセリンに類似した成分として、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ソルビトールなどの多価アルコールもよく使用されます。

(補足)その他として、ヒューメクタントとエモリエントを乳化させたエマルション製剤もあります。

以上、保湿剤には水分の蒸散を防ぐタイプと、水分を保持するタイプの2種類があることを説明しました。

水分は保持されているもののバリア機能が障害されている方にはエモリエント、水分保持が低下している方にはヒューメクタントなど、症状に合わせて使い分けるとより保湿力を高めることができます。

是非、適切な保湿剤で角質ケアを行ってみてくださいね。
(今回のブログ記事は涌水医師が担当しました。)

書いている人

岩橋 陽介

岩橋 陽介

東京の皮膚科・美容皮膚科「医療法人社団 肌のクリニック」の医師・院長をしています。 [医師紹介]

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