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ミニピルの種類と特徴・血栓症のリスク

time 2016/01/03

ミニピルの特徴

ミニピルとは、黄体ホルモン(プロゲストーゲン)のみで女性ホルモン(エストロゲン)を含有していないピルのことです。ミニピルのメリットとして、エストロゲンが含有されていないため、血栓症のリスクが少ないとされ、医師の指導のもとに、肥満の方、35歳以上の方、喫煙者の方、授乳中の方でも比較的安全に服用できます。一方デメリットとして、肌に対する効果(肌荒れ、ニキビを抑える作用)が弱いことや、飲み始めに不正出血が数ヶ月続くことがあること、連日しっかりと同じ時間に内服をする必要があること、などが挙げられます。ミニピルは日本では全く普及しておらず、認可もされていませんので、処方している病院、クリニックはほとんどありません。しかし、上記のような特徴を持つために、有用性が高い薬剤です。

ミニピルの種類

ここでは、黄体ホルモン(プロゲストーゲン)単独で、なおかつ避妊目的で使用されている薬剤をミニピルと呼びます。Progestogen-Only Pillのため、海外では略してPOP(ポップ)とも呼ばれています。

商品名 プロゲストーゲンの種類 1錠あたりの含有量
ノリディ
Noriday
ノルエチステロン
第一世代
350μg
(ルナベルは1000μg)
マイクロノア
Micronor
ノルエチステロン
第一世代
350μg
マイクロバル
Microval
レボノルゲストレル
第二世代
30μg
(トリキュラーは50~125μg)
ノルゲストン
Norgeston
レボノルゲストレル
第二世代
30μg
セラゼッタ
Cerazette
デソゲストレル
第三世代
75μg
(マーベロンは150μg)
ノアルテン ノルエチステロン
第一世代
5mg(5000μg)
ディナゲスト ジエノゲスト
第四世代
1mg(1000μg)

 

ノアルテンとディナゲストは避妊目的の薬剤ではないため、正確にはミニピルではありません。ノアルテンは、生理周期の調整や無月経治療に使用されています。1錠あたりのノルエチステロンは5mg(5000μg)ですので、ノリディやマイクロノアの約15倍の量を含有しており、避妊薬目的として毎日飲むにはやや多すぎます。ディナゲストは1日2回飲むことで、卵巣からのエストロゲンの産生を抑制し、子宮内膜の周期的な増殖を抑えることにより、子宮内膜症治療に使用されています。排卵も抑制するので、飲み忘れがなければ避妊作用もあるはずですが、子宮内膜症に特化した試験しか行われておらず、避妊薬としての適用はありません。
ちなみにセラゼッタはデソゲストレル 0.75mgと書いてあるHPがありますが、正しくはデソゲストレル0.075mg=75μgです。

ミニピルの男性ホルモン(アンドロゲン)活性

含有しているプロゲストーゲン量から、1錠あたりのアンドロゲン活性を計算したのが下の表です。(ノルエチステロン1mg=1として小数点第3位四捨五入)

商品名  アンドロゲン活性
ノリディ・マイクロノア 0.35
マイクロバル・ノルゲストン 0.25
セラゼッタ 0.26
ノアルテン 5
ディナゲスト 0

 

どの薬剤もエストロゲンは入っていませんので、ニキビに対してはアンドロゲン活性の低いミニピルのほうが良いわけです。ただし、エストロゲン活性がない分、ニキビの治療というところまでは難しく、あくまで悪さをしないものと考えたほうが良いでしょう。ディナゲストに含まれるジエノゲストは、アンドロゲン活性がないため、ニキビや肌荒れ、多毛などの副作用がほとんど見られません。しかし、前述したようにミニピルとしては使用されておらず、かなり高価な薬剤なので、一概におすすめできません(子宮内膜症で保険適用でも1ヶ月で1万円弱の費用がかかります)。マイクロバルやセラゼッタは、比較的アンドロゲン活性が低いので、試しに飲んでみて相性を見てみるのも良いでしょう。

ミニピルの血栓症のリスク

前回の記事「低用量ピルの種類と血栓症のリスクとニキビへの効果」の中で、女性ホルモン(エストロゲン)が肝臓由来の凝固因子(血液を固める因子)を増加させるために、血の塊ができやすくなるので、ピルはエストロゲンの含有量が低いほど、血栓症のリスクが低くなる傾向にあるということを説明しました。 女性ホルモン(エストロゲン)を全く含有しないミニピルは、血栓症のリスクはないのでしょうか?

ミニピルの血栓症のリスクについての考察

アフリカ、アジア、ヨーロッパ、ラテンアメリカでのWHOによる多施設共同比較試験において、経口剤、注射剤ともにミニピル(POP)による血栓症(脳梗塞、静脈血栓症、心筋梗塞)リスクの有意な上昇は認められませんでした(※1)。
ドイツで行われた16歳~44歳の女性を対象としたケースコントロール研究でも、ミニピル(POP)による血栓症リスクの有意な上昇を認めませんでした(※2)。
74086名の50歳以下の女性を調べたコホート研究では、黄体ホルモン単独製剤への暴露を2つのカテゴリーに分けて個別分析しており、第一世代ノルエチステロン換算で1日のプロゲストーゲン量0-5㎎の群(Progestagens)と、5mg-30mgの群(Progestagens-other)では、静脈血栓症の相対リスクがそれぞれ1.3と5.3で大きく異なっていることを報告しています(※3 Table2)。

ミニピルの血栓症リスク
Vasilakis C. et al.,Lancet1999;354:1610-1611.

つまり、通常の避妊目的の用量でミニピルを服用している場合は、血栓症のリスクの上昇はないものの、月経異常など他の疾患の治療目的で1日5mg(5000μg)以上の用量を飲んでいる場合、血栓症のリスクは有意に上昇することを示しています。

※1.WHO Collaborative Study of Cardiovascular Disease and Steroid Hormone Contraception. Cardiovascular disease and use of oral and injectable progestogen-only contraceptives and combined injectable contraceptives: results of an international, multicenter, case-control study. Contraception 1998;57:315-24.
※2.Heinemann LA, Assmann A, DoMinh T, et al. Oral progestogen-only contraceptives and cardiovascular risk: results from the Transnational Study on Oral Contraceptives and the Health of Young Women. Europ J Contraception & Reproductive Health Care1999;4:67-73.
※3.Vasilakis C, Jick H, del Mar Melero-Montes M. Risk of idiopathic venous thromboembolism in users of progestogens alone. Lancet1999;354:1610-1611.

ミニピルの血栓症のリスクは現時点ではないか、ほとんどない

ノルエチステロン5mg(5000μg)以上の用量を摂ると、血栓症のリスクが上がるのはなぜでしょうか?それは、取り過ぎた黄体ホルモンが、女性ホルモンへ変換されるからと考えられています。
下記の表は、黄体ホルモン活性から、ノルエチステロン換算量を計算したものです。ディナゲストはプロゲステロン受容体のアゴニスト活性の中央値から推定で計算しています。

商品名  黄体ホルモン(ノルエチステロン換算)量
ノリディ・マイクロノア 350μg
マイクロバル・ノルゲストン 159μg
セラゼッタ 675μg
ノアルテン 5000μg
ディナゲスト 6950μg(推定)

 

現在、ミニピルとして使用されているノリディ・マイクロノア・マイクロバル・ノルゲストン・セラゼッタは、黄体ホルモン量が少なく、治療目的で使用されているノアルテン、ディナゲストの黄体ホルモン量は多くなっています。血栓症のリスクは、前回の記事で書いたように、単純に黄体ホルモン量で決定するものではなく、黄体ホルモンの種類(エストロゲン・アンドロゲン比)等も関係してきます。また、黄体ホルモンの種類によって女性ホルモンへの変換率が異なる可能性も十分に考えられますから、上記の表はあくまで参考程度です。

現時点ではミニピルが血栓症のリスクを有意に高めるというエビデンスは存在せず、ミニピルの血栓症のリスクはないか、ほとんどないと言って良いと考えています。

ただし、ミニピルユーザーはピルユーザーと比較して数が少ないため、比較的小規模の研究、試験の報告となっています。今後のさらなる解析も待たれるところです。当院としては血栓症の既往がある方や喫煙者の方へ積極的におすすめするものではありませんが、35歳~40歳以上のピルユーザーにとっては非常に副作用が少なく飲みやすい薬であるため、低用量ピルからの切り替えとしておすすめします。

ミニピルの処方

当院ではミニピルとしてセラゼッタを処方しています。ミニピルの処方や値段・価格などについて詳しくは、当院HPの「ミニピル外来」をご参照ください。

※一度受診していただければ、その後は遠隔診療によるオンライン処方も可能です。

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肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

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