肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

その美白化粧品が効かない理由~ビタミンC編その1~

time 2016/05/08

ビタミンCは美白化粧品の成分の王道

ビタミンCは、ニキビの炎症を沈め、皮脂を抑制し、ニキビ跡を残りにくくします。抗しわ作用や活性酸素除去作用、美白作用(メラニン生成阻害作用、メラニン色素還元作用)を持ち、様々な化粧品に配合されています。美白系の化粧品のまさに王道で、欠かせない成分となりました。

ただ、肌に対してすこぶる良い働きをするビタミンCですが、ビタミンC配合の化粧品を長年使っていても、いまいち効果を実感できないという方は沢山います。ここでは、実際の商品に配合されている成分を例にとって、効果が出ない理由を考察していきます。

※もともと化粧品という範疇のため、シミを完全に消すなど、劇的な効果を望んでも難しい、という心積もりで読んでください。

ピュアビタミンC配合化粧品の問題点

ピュアビタミンCとは、あたかも新しいビタミンCであるかのように広告している化粧品サイトもありますが、単なるビタミンC=L-アスコルビン酸のことを指します。ビタミンCは非常に不安定な成分で、光や熱だけでなく、空気に触れるだけでも簡単に酸化します。ビタミンCを肌に塗った途端に、効果は失われ、製品によっては、ボトルの中ですでにビタミンCが壊れているものもあります。

ビタミンC水溶液は、通常は無色透明ですが、時間がたつと黄色へ変色~茶褐色へ変色します。変色しているのはビタミンCが酸化されているからで、酸化型ビタミンCはアスコルビン酸ラジカル(活性酸素)を発生させ、肌に悪影響を及ぼします。

ピュアビタミンCを外用して、紫外線に当たると、顔が赤くなったり、毛穴が黒ずんで来ることがありますが、これもアスコルビン酸ラジカルの影響といえます。

また、ピュアビタミンCは水溶性のため、浸透が非常に悪いという特徴があります。浸透性が悪いため、美白で一番の要となる真皮で美白作用が発揮されません。

ビタミンCを安定化させるのにリポソーム(カプセル)に包んだものもあります。リポソーム化することによって安定性を高めるとともに、ビタミンCをナノ化させて吸収性を良くすると宣伝されています。しかし、リポソーム化したものは、そのままの形ではビタミンCとして作用できませんから、角質層へどれだけ浸透し、どれだけ分解されてビタミンCを放出するのか、どれだけ安定して持続するのか等、沢山の課題・問題点があります。

ピュアビタミンCの溶剤に注意

ピュアビタミンCが非常に酸化しやすいことを書きましたが、酸化を防ぐためによく市販の化粧品で謳われているものが、「溶剤」に溶かしたものです。

ピュアビタミンCを水に溶かすと、すぐに酸化してしまうため、プロピレングリコールなどの溶剤に溶かして安定化させます。しかし、プロピレングリコールなどの溶剤は肌への刺激が強いため、お勧めできません。

ペンチレングリコールやブチレングリコール(BG)などの溶剤に溶かした場合も同様です。ビタミンCの強い抗酸化作用を抑えるために(酸化させないように)、ペンチレングリコールやBGがかなりの濃度で配合されている化粧品が多く、低濃度では刺激が少なくても、高濃度の場合は皮膚への刺激性は強くなります。

また、水に馴染みやすい親水性のNMP(N-メチル-2-ピロリドン)と、油に馴染みやすい親油性のDMI(ジメチルイソソルビド)を使った両親媒性の溶剤にピュアビミタンCを溶かした製品もあります。

NMPとDMIを溶剤として、経皮吸収率を上げる方法は、ATDS方式(Amphiphilic Transepidermal Delivery system, 両親媒性経皮浸透システム)と呼ばれており、米国のSAGE Pharmaceuticals社が開発したと書かれていますが、単に界面活性剤の作用で皮膚のバリアを壊して浸透率を上げているだけです。

NMP(N-メチル-2-ピロリドン)は塗料や、樹脂用溶剤、電子部品の洗浄用溶剤、塗膜剥離剤などに使用されますが、皮膚刺激性や有害性が強く、化粧品などの皮膚への使用には通常使われません。「三菱化学のN-メチル-2-ピロリドンの安全デーシート」には、「皮膚接触用途に使用してはならない。」「接触した身体の各部位をよく洗うこと。」「皮膚刺激。」「強い眼刺激。」「生殖能力または胎児への悪影響のおそれの疑い。」との記載があります。

DMI(ジメチルイソソルビド, イソソルビドジメチルエーテル)は、浸透性を上げるために医薬品のクリーム基剤に配合されていることがあります。

どこのサイトを見ても、「(NMPとDMIを使った)両親媒性溶剤で、ピュアビタミンCの浸透率を上げる!」「特許取得のATDS方式で、浸透率がすごい!」という宣伝文句しか書かれておらず、溶剤の安全性や問題点について書かれているサイトは皆無でした。

両親媒性の溶剤であれば、すなわちそれは、肌のバリアを界面活性作用によって壊して浸透性を上げているわけですから、そのような界面活性剤(溶剤)が肌に浸透することになり、お勧めできる化粧品とは言えません。

当院でも、ピュアビタミンCが25%配合されている美容液を使用して、顔が真っ赤に腫れてしまった患者さんがいましたが、ピュアビタミンCが溶剤で安定化されていたとしても、溶剤そのものの刺激、もしくは、肌上で酸化された酸化型ビタミンCの刺激によって、そのようなことが起こり得ます。

ASVC(活性保持型ビタミンC)の問題点

ビタミンCは、刺激性があることから高濃度に配合することは難しく、また、高濃度に配合してもすぐに酸化されてしまい、意味がないという欠点がありました。

ASVC(活性保持型ビタミンC)は、その欠点を克服したビタミンCです。ビタミンCを結晶化し、これをグリセリンに懸濁させてクリーム状にすることで、ビタミンCを35%という高濃度で安定化させています。

ビタミンCをリポソーム化せず、高濃度で安定化させて配合できるASVCですが、問題点もあります。

ASVCは「活性保持型」という名前が示す通り、活性は長期間保たれているのですが、それは保存している間の活性のことです。肌に塗ると、肌の温度でビタミンCの結晶が溶け出し、普通のビタミンCを塗った状態と同じになります。

高濃度のビタミンCが溶け出しますので、肌に刺激を感じるケースも多く、また、急速に酸化しますから、その酸化したビタミンCが、さらに肌への刺激となります。そのため、ASVCの公式の使い方は「肌に塗って3分経ったら洗い流してください。」というパック的な使い方になっているわけです。

実際にASVCを使用して顔が真っ赤になってしまった患者さんを診察しましたが、その原因はアレルギーではなく、やはり上記の刺激性にあると考えられます。

ASVC中のビタミンC結晶は、温度が上がると一気に溶解しますので、徐々にビタミンCが放出されるということはなく、作用はごく短時間です。ASVCは、化粧品扱いにはなっていますが、上記のような性質から、保湿クリームに混ぜて、「長時間肌に作用させる」という塗り切り型のスキンケアには適しません。

また、角質層への浸透性も、通常のピュアビタミンCと変わらず浸透しませんので、その点はビタミンC誘導体に軍配が上がります。

ASVCの原材料はアスコルビン酸、グリセリン、ジグリセリンのみですので、驚くほど原料代は安いのですが、ASVC自体は非常に高価です。原理、作用はビタミンCパックと同じですので、酸化しないように個別包装された粉末状のビタミンCを購入し、グリセリンと水で濃度を調整してパックするのと、医学的には何ら変わりません。

効果が持続するわけではありませんので、パックし続けなければなりませんが、回数を増やせばそれだけ肌への刺激が増えますので、途中でやめてしまう方が多いのが実情です。

ビタミンC誘導体(VC誘導体)の問題点

VC誘導体は、ビタミンCにリン酸基等を結合させ、酸化されにくくし、安定性を高めたものです。

ビタミンC誘導体が角質層へ浸透すると、細胞からリン酸基の結合を切る酵素が分泌されます。肌の内部でビタミンCへ変化し、メラニン色素の生成を抑制したり、分解してくれたりと、ビタミンC本来の作用を発揮します。

VC誘導体と言っても、実に様々な種類があり、効果も大きく違います。種類の選択と濃度の選択、活性の有無などが重要です。

VC誘導体は、ビタミンCよりも安定性が高いと言っても、やはり壊れやすいことに変わりはなく、紫外線や温度の管理(原則は冷蔵保存が適しています)も重要となってきます。

現在VC誘導体の中で、特に紫外線や熱に対して安定性が高く、常温でも保存可能な誘導体は、グリセリンとオクタノールを結合させたGO-VC(両親媒性ノニオックビタミンC誘導体)や、ビタミンCにブドウ糖であるグルコースを結合させたAA-2G(L-アスコルビン酸2-グルコシド、アスコルビルグルコシド)、ビタミンCの水溶性アルキルエーテルであるビタミンCエチル(VCエチル、3-o-エチルアスコルビン酸)、アスコルビン酸の水酸基にグリセリンを導入したビスグリセリルアスコルビン酸や3-o-グリセリルアスコルビン酸(VCグリセリル、VC-3G)などがあります。

AA-2G(アスコルビルグルコシド)は、熱、光、水、空気に対して安定で、100℃の水溶液中で3分間も安定しています。腸のブドウ糖分解酵素によって、徐々にビタミンCへ変換されるため、持続性があるビタミンCとしても知られています。

安定型で持続型であり、常温保存ができ、しかも価格も安価なこともあって、一時期は化粧品への配合が急速に進みましたが、近年は逆に減っています。その理由としては、肌にはブドウ糖分解酵素がなく、AA-2Gを肌に塗ってもビタミンCへ変換されないためです。つまり、AA-2Gを配合した化粧品には、ビタミンCそのものとしての美白効果はあまり期待できません。

AA-2G(アスコルビルグルコシド)を配合した化粧品は、有名ブランドに沢山あります。成分にビタミンC・2-グルコシドや、アスコルビン酸グルコシド、アスコルビルグルコシド、L-アスコルビン酸2-グルコシドなどと表記されています。

「使っている化粧品にビタミンCって書いているから、美白にも効果がある。」と思い込んでいる患者さんが多くいるのですが、ビタミンC誘導体の種類にまで気を付けている患者さんはあまりいません。「ほとんど効果の期待できない化粧品を、長年使い続けていた」ということにならないためにも、しっかりと成分を確認するようにしましょう。

続きます。

その美白化粧品が効かない理由~ビタミンC編その2~

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]