肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

ビタミンC誘導体ランキング~その2~

time 2016/06/14

水溶性ビタミンC誘導体の比較ランキングは
ビタミンC誘導体ランキングその1

油溶性ビタミンC誘導体

油溶性(脂溶性)ビタミンC誘導体はいくつかありますが、現在化粧品へ配合されている脂溶性VC誘導体は主に2種類です。

パルミチン酸アスコルビル | アスコルビン酸パルミチン酸エステル ★★☆☆☆☆

水溶性のビタミンCの6位の水酸基に脂溶性のパルミチン酸をエステル修飾した油溶性のビタミンC誘導体です。皮膚内のエステラーゼという酵素によって、ビタミンCと脂肪酸に分解されます。

同じ部位にステアリン酸をくっ付けたステアリン酸アスコルビルは、マーガリンの抗酸化剤として使用されています。

パルミチン酸アスコルビルは脂溶性(油溶性)を獲得しているため、水溶性VC誘導体よりも経皮吸収率が高くなっており、今でも主に海外のクリームなどに配合されていますが、日本ではほとんど使用されていません。

その理由は、ビタミンCの最も還元力が強い2位と3位の水酸基が修飾されておらず、安定性が悪いことと、パルミチン酸エステルが加水分解されやすく、クリームや乳液に混合すると、数ヶ月で酸化されて黄色に変色してくるという問題があるからです。

そんなわけで私の評価は☆2と低くなっています。

VC-IP | テトラヘキシルデカン酸アスコルビル ★★★☆☆☆

ビタミンCの4つの場所全部に、イソパルミチン酸という脂肪酸を結合(エステル修飾)させたビタミンC誘導体です。皮膚内のエステラーゼという酵素によって、ビタミンCと脂肪酸に分解されます。

刺激性の低い脂肪酸を付けた誘導体なので、乾燥もせず保湿性が高いのが特徴です。クリームや乳液、オイルにも混合できますが、水とは混ざりません。NET VC-IPというナノ化した分散体の原料であれば、白濁はしますが、化粧水へ配合することが可能です。

安定性は非常に高く、油溶性のために経皮吸収率に優れています。分解されるまで時間がかかるために、遅効型のビタミンC誘導体と言われています。臨床的にはメラニン産生抑制、脂質の過酸化防止、コラーゲン合成の促進、紫外線(UV-B)による細胞障害の抑制、皮膚癌の転移抑制、ニキビの抑制効果が認められています。

推奨濃度は1%~5%ですが、上限の5%以上を入れると、結構べったりした感触になるので、他のオイル成分を減らす必要があります。VC-IPが分解されて生じる過剰な遊離脂肪酸が、逆に炎症を引き起こしてニキビの原因にならないかの心配はあるため、そういった意味でも5%以下で使用するのが良いと私は考えています。

ビタミンC含有量は16%と低いのが残念ですが、刺激性がほとんどなく、保湿性が高いという特徴がありますので、特に敏感肌の方や乾燥肌の方へにおすすめのビタミンC誘導体です。ただし、非常に稀ですがVC-IPで赤みやアレルギー症状が出る方もいます。

アメリカでは、安定性の低くすぐに変色してしまうパルミチン酸アスコルビルに変わって、VC-IPを配合したクリームが多くなってきています。

両親媒性ビタミンC誘導体

両親媒性ビタミンC誘導体は、水溶性の性質と油溶性の性質の両方を併せ持ったビタミンC誘導体です。水にも油にも溶け、油溶性の性質を持つことから経皮吸収率が非常に高いのが特徴です。

APPS | パルミチン酸アスコルビン酸3Na 

作りたて★★★★☆☆ 作り置き★☆☆☆☆☆

リン酸型ビタミンC誘導体にパルミチン酸を付け、親油性(脂溶性)を付与した両親媒性ビタミンC誘導体です。初めての両親媒性ビタミンC誘導体のため、新型や進化型、高浸透型などと呼ばれていますが、現在は他にもいくつかの両親媒性ビタミンC誘導体が開発されたため、結構古いビタミンC誘導体となっています。

2000年に昭和電工がAPPSを開発し、従来のビタミンC誘導体の100倍吸収されるとして大ヒットとなってから、今もずっとヒットし続けている成分です。浸透率の高さ以外にも、刺激や乾燥がほとんどないなど、従来のビタミンC誘導体と比較して画期的な特徴を持っています。

しかし、APPSには大きな弱点があります。それはビタミンC誘導体の中で、最も安定性が悪いということです。

APPSの配合推奨濃度は1~2%です。配合推奨濃度が低いのは、「浸透性が高いので高濃度である必要がない」という理由以外にも、「安定性が低いため、高濃度で配合できない」という理由もあります。

APPSは、水溶液中で徐々に分解が進んでしまうため、2%以上配合するとさらに安定性が低くなり、化粧品としての品質を保持できません。

APPSはビタミンCにリン酸基とパルミチン酸基がくっ付いた構造ですが、APPSのパルミチン酸の修飾はすぐに外れてしまうので、ビタミンCの安定化には役立たず、パルミチン酸が外れると、リン酸の修飾も外れやすくなり、APPSの酸化が進みます。

APPSの粉末で手作り化粧水を作ったことがある方はわかるかもしれませんが、APPSの粉を水に溶かすと泡立ちますよね。その泡がパルミチン酸です。

水に溶かすと、APPSのパルミチン酸基はすぐに加水分解で切断されてしまい、パルミチン酸が浮いてきます。パルミチン酸は高級脂肪酸なので、油性成分です。水に油を入れると油が浮くように、APPSから切断されたパルミチン酸も化粧水の中に浮いてきます。

パルミチン酸は酸性ですので、APPSが分解されてパルミチン酸がどんどん出てくると、化粧水中のPHが酸性に傾き、リン酸基が外れてしまい、APPSの安定性が保てなくなり、酸化されてしまいます。

実際の研究でも、パルミチン酸の修飾が外れると、リン酸基も切断され、酸化が進んでしまうという報告がなされています。

このような悪循環で、APPSは酸化が進んで行ってしまうので、APPSは「不安定で高濃度で配合できない」誘導体と位置付けられています。

APPSは至適PHも7.5~8と弱アルカリ性であり、非常に狭い範囲でしか安定性が保てません。1%配合の化粧水では、冷蔵保存で1ヶ月以内の使用期限が目安ですが、できれば、毎日原末から化粧水を作るのがベストです。

市販のAPPS化粧品は、製造してから数ヶ月~数年が経過していますので、全く効果はありません。逆に酸化したビタミンC誘導体は、肌へ悪影響を及ぼす可能性も指摘されています。また、パルミチン酸の修飾が外れると、当然両親媒性ではなくなりますので、APPSの最大のメリットである「高浸透性」もなくなります。

私が患者さんへ市販のAPPS配合の化粧品をお勧めしないのは、こういった理由からです。

市販品の中でも、APPS原末から自宅で化粧水を作るタイプのものがありますので、そういった製品を購入することをお勧めします。

ちなみに、APPSを1%以上で配合すると「目に炎症が起こる危険」があるため、1%以上配合のものは使用しないようにと説明しているサイトがありますが、昭和電工に確認したところ、1%以上だから危険ということはないようです。臨床試験では確かに「目への軽度の刺激性」を認めていますが、化粧品は目に入れるものではありませんので、濃度に関わらず、通常の化粧水と同様に目をつぶって、目に入らないように使用し、目に入った場合はすぐに水で洗い流せば問題ありません。当院では長年2%のAPPSローションを処方していましたが、目の炎症を訴えた患者はゼロです。(今はAPPSは処方しておらず、VCエチルやVCグリセリルに変更しています。)

以上のように、作りたてのAPPS化粧水の場合は、浸透性も高く活性が保たれているため、十分効果があります。しかし、両親媒性であるということは、界面活性作用があることと同義であり、浸透性が高いということは、界面活性剤の力で肌のバリアを壊しているからです。また、2%以上では泡立ってしまい(これもAPPSが界面活性剤なので泡立ちます)、高濃度での配合に適しません。そのため、作りたてのAPPSの評価は★4つにしています。

作り置きされたAPPSの場合(つまり市販のAPPS化粧水のことです)、効果がないどころか、酸化されたAPPSを使うことになり、むしろ使わない方がましなため、★1つの最低評価としています。

APIS | イソステアリルアスコルビルリン酸2Na ★★★☆☆☆

2位の水酸基にイソステアリルリン酸をエステル結合させた、APPSの後に登場した新型の両親媒性ビタミンC誘導体です。APPSと同様、両親媒性のために浸透率が非常に高いのが特徴です。

APPSはパルミチン酸とリン酸のエステル結合を切り離すために、エステラーゼとフォスファターゼが必要なのに対し、APISはフォスファターゼのみでイソステアリルリン酸が切り離されるということです(メーカー曰く)。

VC誘導体がビタミンCへ変換されるために、APPSが2つの変換酵素が必要なのに対し、APISは1つの酵素だけで良いため、「APPSは100倍の浸透率ですが、APISは200倍の浸透率です!」と宣伝しているサイトがありますが、全く正しくありません。

前述した通り、APPSのパルミチン酸のエステル結合は簡単に外れてしまうので、APPSとAPISの変換効率はほぼ同等と考えられます。また、APISが従来のビタミンC誘導体と比較して、200倍の浸透率を示したというデータは、私の知る限りありません。

APPSはパルミチン酸、リン酸に分解されますが、それらはもともと肌の成分として存在するものなので、安全性は非常に高いです。

それに対し、APISはイソステアリルアルコールを原料に使用しており、肌にもともとある成分ではありません。イソステアリルアルコールは、人の肌に対する感作性(アレルギー性)の報告もあり、APPSより安全性は若干落ちると言えます。

ただ、イソステアリルアルコールの毒性は低く、化粧品での使用実績も多い成分のため、アレルギー等なければ過度に心配する必要はないと考えます。

APISがあまり普及していない理由は、上記のこともありますが、開発元の東洋ビューティーが原料提供をしていないことが一番大きな理由です。原料を入手して自社で製造することができないため、東洋ビューティーへOEMとして発注しなければなりません。

市販品でAPISを配合したものは、どれも配合濃度の開示がなされていないため、何%入っているのか分かりませんが、価格も高く、後述するGO-VCの例から推察して、ほとんどの市販品がかなり低濃度なのではないかと推察されます。APPSより安定性は高いため、濃度や安全性等のデータが積極体に開示されるようになれば、今後、有用なビタミンC誘導体になるかもしれません。

GO-VC | カプリリル2-グリセリルアスコルビン酸・グリセリルオクチルアスコルビン酸 ★★☆☆☆☆

2位の水酸基にグリセリン、3位の水酸基にオクタノールを結合させた、新型の両親媒性ノニオン性ビタミンC誘導体です。両親媒性(グリセリン=水溶性・オクタノール=油溶性)であるため、肌への浸透率はAPPSと同様に高くなっていますが、パルミチン酸よりもオクタノールの方が脂溶性は低いため、全く同じ浸透率ではないと思います。

リン酸ナトリウムを含まないため、乾燥性がなく、使用感も優れています。PH5の50℃の水溶液中で90日間経過しても、90%以上が残存しており、安定性も非常に高いのが特徴です。ノニオン性のため、ジェルやクリームにも安定して配合が可能で、他の成分との干渉が最も少ないビタミンC誘導体です。

アルブチンの10分の1の濃度でアルブチンより強いメラニン抑制作用を示し、線維芽細胞賦活作用、Ⅰ型コラーゲン産生促進作用を有しています。オクタノールに抗菌作用がありますので、抗アクネ効果も認められています。

ここまで見ると良いこと尽くめのように思われますが、配合推奨濃度は0.05~0.1%と低く、高濃度配合にはまだ課題があります。一つは価格面の問題もありますが、もう一つは安全性の問題もあります。

GOVCが、アスコルビン酸、グリセリン、オクタノールに変換された場合、オクタノールを高濃度で長年使用した際の安全性については、APISのイソステアリルアルコールと同様に完全にはまだ確立されてはいません。

もう一つ、オクタノールを切断する(分解する)酵素が角層に存在するのかどうかが分かりません。仮に3位にオクタノールが付いたままで分解されなければ、皮膚に何らかの問題が出てくる懸念もあります(あくまで仮定に基づいた推測で、まだそのような報告はありません)。

また、オクタノールが仮に切断されるとすると、オクタノールには臭気がありますので、匂いが気になってくる人も出てきそうです。

そのような角度から見ても、高濃度配合をするにはまだまだ課題がありそうです。

それとGO-VCは、アルブチンの10分の1の濃度で美白効果を発揮すると言っても、アルブチンの美白化粧品への配合濃度は2%程度ですので、0.2%以上の濃度が欲しいところです。また、アスコルビン酸の含有率は44%ですので、0.1%濃度では非常に少量のアスコルビン酸しか生成されません。

やはり高濃度配合できるかどうかが今後のGOVCの最大の課題とも言えそうです。研究員の方へ話を伺ったところ、今後は配合推奨濃度を上げた臨床データを取り、医薬部外品での効果効能を取るとのことで、今後に期待できるビタミンC誘導体ではあります。

VC -MG| ミリスチル3-グリセリルアスコルビン酸 ★★★☆☆☆

2位の水酸基をミリスチン酸、3位の水酸基をグリセリンで修飾した、新しい両親媒性のビタミンC誘導体です。高浸透性、高メラニン抑制作用を持ち、ノニオンのため、他の化粧品原料との相性が良く、安定性も高いのが特徴です。

VC-MGの最大の特徴は、界面活性作用があり、乳化剤として使用できることにあります。他のビタミンC誘導体にはないO/W型の乳化作用を持つことで、美容成分だけで作った乳液やクリームを作成することも可能です。すでにHABA(ハーバー研究所)なんかが、この原料を使用してクリームを製造しています。

ミリスチン酸はほとんどすべての動植物油脂中に含まれている飽和脂肪酸であり、酸化もしにくく、安全性が高いのが特徴です。他の飽和脂肪酸同様に、カリウム塩は石鹸の成分に使用されています。

少し用途は限られるので★3つにしています。

VC -3LG| 3-ラウリルグリセリルアスコルビン酸 ☆☆☆☆☆☆

3位の水酸基にグリセリンとラウリル基を付けた、新しい両親媒性のビタミンC誘導体です。弱アニオン性で、肌でラウリン酸とグリセリンに分解されます。

抗酸化作用とセラミド合成促進作用があるようですが、まだ新規のビタミンC誘導体で詳細なデータがないため、未評価としています。

以上、私感を交えてのビタミンC誘導体の評価のため、間違っている情報もあると思います。また、現時点でのランキングであり、今後の新しい知見、データ等によって評価は変更になります。

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]