肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

日焼け止め考察1~肌に優しい日焼け止め

time 2016/07/18

肌にいい日焼け止めは難しい

なんとか肌に良い日焼け止め、いや少なくとも「悪くはない」日焼け止めを作ろうと試行錯誤してきましたが、いろんな壁にぶつかっています。できるだけ活性酸素を発生させないように、できるだけSPFとPA値を高く、できるだけ肌への付け心地がいいように、と突き詰めていくと、あれもダメ、これもダメと、どんどん使える原料がなくなっていきます。

フェルラ酸日焼け止めの問題点

以前当院で調剤していた「フェルラ酸日焼け止め」は活性酸素を放出せず、光触媒もなく、肌を酸化させないので、非常に良い日焼け止めではあったのですが、SPFがしっかり出ないなど、いろいろ問題点もあり、処方終了となりました。

第一の問題点として、フェルラ酸が難溶性であること。水にも油にも溶けません。エタノールには若干溶けますが、刺激の問題を少なくしたいので、エタノールは使いたくありません。当院では、シクロデキストリンという粉末で包接化(包み込むこと)を行い、水溶性にした後に、O/Wのクリームとして作っていました。しかし、シクロデキストリンで包接化した後、フィルターを通して、溶解しきれていないフェルラ酸をろ過するのですが、冷却すると結晶が析出してしまいます。冷却した後にろ過しても、やはり、時間の経過とともに結晶が析出するのと、ろ過すればするほど、フェルラ酸の濃度が下がってしまいます。当院のフェルラ酸日焼け止めを使うと、若干ざらついてしまうのはこのためです。特に品質には問題はありませんが、やはり使い心地を良くすることは、重要な要素になります。

第二の問題点としては、SPFが出ないことです。2%配合でSPF2~です。フェルラ酸を2%配合するのは、前述の溶解性の問題から、かなりの至難の業です。フィルターでろ過すると、濃度が下がりますので、作成する際は1.5倍以上のフェルラ酸を包接化してから、ろ過しなければいけません。SPFが一定になりにくく、PAが1+すらも出ないところが弱点です。

フェルラ酸とビタミンC、ビタミンEの組み合わせは、アメリカの会社が特許を取っているため、市販の化粧品で類似した商品を出すことは難しいのが現状です。フェルラ酸の美容クリームで、日焼け防止ができるというのは、日焼け止めの概念を覆す発見ですが、今の季節には力不足を感じます。そういったわけで、フェルラ酸をちょびっと(0.1%程度)配合した日焼け止めは市販で出ていますが、フェルラ酸をメインで使った日焼け止めは今後も登場しないのではないかと思います。

ノンケミカル=紫外線吸収剤不使用

日焼け止めに少し詳しい人なら、日焼け止め成分には、大きく分けて「紫外線吸収剤」と「紫外線散乱剤」の2つがあるのをご存知だと思います。

紫外線吸収剤は、肌の表面で紫外線を吸収して、肌へ透過させないようにします。紫外線散乱剤は、肌の表面で紫外線を反射(散乱)させて、紫外線を防ぎます。

紫外線吸収剤は、紫外線を吸収する際、熱エネルギーへ変換するため、それが肌への負担(メラニン色素沈着やかぶれなどの原因)になったり、吸収剤自体に細胞障害性や発がん性があるものもあって、すっかり嫌われてしまっています。

そのため、市販の日焼け止めには「ノンケミカル」や「紫外線吸収剤不使用」と書かれているものも多いです。ちなみに、ノンケミカルというのは、「紫外線吸収剤が入っていません」と同義に捉えて問題ありません。

酸化亜鉛・酸化チタンについて

紫外線吸収剤が不使用の日焼け止めの場合、紫外線散乱剤は「酸化亜鉛」か「酸化チタン」になることがほとんどです。

酸化亜鉛、酸化チタンは非常に古くから用いられている「鉱物=ミネラル」であり、ファンデーション等にも配合されています。以前は紫外線吸収剤を使用せずに、酸化亜鉛と酸化チタンだけでSPFを上げるのは難しかったのですが、現在は超微粒子化(ナノ化)酸化亜鉛・酸化チタンによって、ノンケミカルでもSPF50、PA4+の日焼け止めを作ることができます。

酸化亜鉛・酸化チタンは「光触媒活性」を持ち、肌を錆びさせてしまいます。光触媒活性とは、紫外線が当たると、活性酸素を放出する性質のことです。今では、活性酸素の放出を防ぐために、周囲をコーティングしたものが用いられていますが、それについては、次回以降の記事で後述したいと思います。

できるだけ活性酸素を発生させず(肌を老化させず)、なおかつ高いSPFが出るものはないかと、いろいろ探していたところ、見つけたのが「酸化セリウム」という第3の散乱剤です。

酸化セリウムは、光触媒活性が低く、活性酸素の放出が少ないという性質があります。そこで、酸化セリウムを使った日焼け止め作りに没頭していたのですが、肌に使用するには、大きな問題があることがわかりました。酸化セリウムの面白い性質と、問題点については、次回に続きます。

→日焼け止め考察2~酸化セリウムを使った日焼け止め

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]