肌のクリニック院長の肌ブログ

東京でニキビ治療・シミ治療・調剤化粧品・プラセンタ療法外来をしている医師のブログ

日焼け止め考察2~酸化セリウムを使った日焼け止め

time 2016/07/19

参照記事
日焼け止め考察1~肌に優しい日焼け止め/

※諸事情により、一部記事を訂正しています。(8/23)

第3の紫外線散乱剤「酸化セリウム(セリア)」の性質

前回の記事で、酸化亜鉛、酸化チタンよりも光触媒活性が少ない、「酸化セリウム」を紹介しました。セリウムは、レアメタル(レアアース)の一つですが、自然界に多く存在する金属です。 大半の希土類元素が3価の正電荷を持つ中で、セリウムは4価の荷電もとることができ、酸化還元反応を触媒します。

セリウム(Ce)の水溶液中における4価から3価、つまりCe(IV)→Ce(III)還元反応に関する還元電位は、約1.6 – 1.7 Vと非常に大きく、このため、4価のセリウムCe(IV)の水溶液は、強力な酸化触媒作用を有しています。また、逆に3価から4価、つまりCe(Ⅲ)→Ce(Ⅳ)酸化反応によって、還元触媒作用も有しています。

酸化セリウム(CeO2=セリア)は、それ自体で酸化剤として働き、部分還元されます。部分還元されたセリアは、還元剤として働き、それ自身は酸化されるという、面白い性質があります。酸化亜鉛、酸化チタンは紫外線照射によって、活性酸素を発生させDNAを損傷させますが、それらと比較して、セリアの活性酸素の発生は少なく、DNA損傷も少ないことが報告されています。

また、セリアは粒径にもよりますが、幅広い波長の光を反射するという特徴もあります。

酸化セリウム(セリア)の問題点

紫外線による活性酸素も発生させず、ブロックする光の波長が長い酸化セリウムは、有望な紫外線散乱剤になると思い、酸化セリウムを使用した日焼け止めを調剤していたところ、沢山の問題点にぶつかりました。いろいろと問題点はあるのですが、酸化セリウムを最も使い辛くしているのは、それ自身が酸化剤(酸化触媒)として働くという作用に起因します。

酸化セリウムは、確かに光触媒活性は低く、紫外線が当たった際には、活性酸素の放出は少ないのですが、そもそも紫外線が当たらない状態で、酸化触媒として働くため、有機物を含め、いろいろな物質の酸化を促進させます。これは、Ce(III)配位化合物を酸化して、酸化セリウムを作る際に、Ce(IV)が生成物として生じ、酸化セリウム溶液中では、少量ながらもCe(IV)が存在しているため、前述したように、Ce(IV)が酸化触媒として働くことにも起因していると考えています。

酸化セリウムを抗酸化作用が強い「ビタミンC誘導体」や「フェルラ酸」と混合すると、その酸化触媒作用により、あっという間にビタミンC誘導体やフェルラ酸が酸化されて、茶褐色に変色してしまいます。(下の写真は市販の酸化セリウム粉末とビタミンC誘導体を混ぜた時の反応)

酸化セリウムとビタミンC誘導体

ご自身の酸化セリウム配合の日焼け止めと、ビタミンCとの相性を見たい場合は、上の実験をやってみることをお勧めします。ビタミンCは「アスコルビン酸」という名前で薬局に粉末が置いてありますので、アスコルビン酸を少量コップの水に溶かし、その中にご自分の日焼け止めを入れてかき混ぜるだけです。

酸化セリウムは酸化剤として働きますので、肌表面の酸化を促進させてしまう可能性があります。酸化セリウムの日焼け止め作りに没頭していた際、試作品をいろいろな部位に使用していたのですが、ある日、ふと鏡を見たら、顔が真っ赤になっていました。最初は、防腐剤のパラベンやフェノキシエタノールにアレルギーが出たのかと思っていましたが、それぞれ単剤でパッチテストを行ったところ、酸化セリウムの原料そのものに、アレルギー症状(赤みと発疹)が出ていることがわかりました。私のようにアレルギーが起こった場合は、酸化セリウム自体使えなくなりますので、体質によっては注意しなければなりません。(下の写真は酸化セリウムの原料を塗布して10分後の腕の赤み)

酸化セリウムアレルギー

 

酸化セリウム(セリア)の課題

酸化セリウムを日焼け止めとして用いるために、酸化セリウムの酸化触媒活性や、粒子の凝集を抑制することが長年の課題であり、現時点でも重要な課題として残っています。酸化触媒活性や凝集を抑える目的で、酸化亜鉛や酸化チタンと同様に、さまざまな被覆材で表面処理(コーティング)をすることが行われています。しかし、100%コーティングすることは不可能で、数%程度は被覆されていない、もしくは、一部分しか被覆されていない酸化セリウムが存在します。そのため、表面処理された酸化セリウムを使用しても、前述の写真のようにビタミンC誘導体などの抗酸化作用が強い(いわゆる自身が酸化されやすい)原料と混合すると、酸化されて茶褐色へ変色してしまうという問題は未解決です。

酸化セリウムに異種金属イオンのCa2+を置換固溶させ、酸化触媒活性を低下させる方法(カルシア固溶セリア)や、酸化セリウム粒子表面に、不定形の窒化ホウ素を被覆して、触媒活性を抑える方法も、10年程度前から開発されてはいますが、酸化セリウムの酸化触媒活性はかなり強いため、なかなか実用化に至っていないのが現状です。

こういったわけで、酸化セリウムを肌へ使用するには、まだまだ超えなければならないハードルがあると感じます。

当院では、高濃度のビタミンC誘導体を調剤化粧品として処方しています。ビタミンC誘導体の化粧水を肌に付けた後に、酸化セリウムを重ねて付けると、ビタミンC誘導体の酸化を早めてしまう可能性があります。そういったわけで、ビタミンC誘導体と相性が悪い日焼け止めを処方するわけにはいかず、実用化しませんでした。

いくつかのメーカーで、酸化セリウム入りの日焼け止めを製造しているものの、酸化亜鉛、酸化チタンをメインにして、酸化セリウムは補助的に配合しているものがほとんどです。また、中小のメーカーで酸化セリウム単独で、日焼け止めを作っているところがありますが、酸化セリウムの良い面しか宣伝しておらず、さらに一部のメーカーでは、意図的にかそうでないかわかりませんが、誤った広告がなされています。

また、酸化亜鉛・酸化チタン・酸化セリウムなどの散乱剤を「ステアリン酸でコーティングして、活性酸素を発生させない」と謳っているメーカーもありますが、そもそもステアリン酸は飽和脂肪酸であり、ステアリン酸でコーティングする理由は、皮脂に馴染ませ易くし、使用感を良くするためや、クリームや乳液に分散させやすくるためです。ステアリン酸でコーティングしても、酸化触媒活性や光触媒活性が落ちるわけではありません。

大手メーカーは、新しく出す製品と、自社で出している他の製品との相性も見ますので、日焼け止めを購入するのであれば大手メーカーのものが安心です。

普段使っている化粧品との相性を見たい場合は、日焼け止めと化粧品を透明なコップに入れて混ぜ、ラップをして日が当たる場所に1日放置してください。紫外線の影響下で、製品が変色するかどうかがわかります。

→日焼け止め考察3~手作り日焼け止めではSPFが出ないへ

肌のクリニック

院長 岩橋 陽介

院長 岩橋 陽介

東京の調剤化粧品とニキビ治療専門皮膚科 肌のクリニック高円寺院の院長ブログ。Twitterではスタッフ全員でつぶやいています。 [詳細]